海面下の農地を守る、1000mの用水路で太陽光発電自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2014年06月06日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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1kmにわたって太陽電池を並べる

 実証実験の成功を受けて、実運用に耐える設備の基本設計を開始、2013年6月には事業費5億7900万円のうち、「農村漁村活性化プロジェクト支援交付金事業」として国から50%の補助を受けられることが決まった。同年7月には詳細設計に入り、同8月に入札。工事に取り掛かった。

 法面を使うタイプと平地に設置するタイプの太陽光発電システムを立ち上げた。「どちらの土地も賃貸料などは不要だ。法面は維持管理事業の付帯事業として発電に使う。平地は補助整備事業のために各農家が土地を出し合っている施設用地を利用した」(事業計画係)。

 小松堀排水路発電施設(新潟市江南区早通)は長さ約3kmの小松堀のうち、合計約1kmの法面を利用。本間組が建設した(図4)。「法面の角度は約30度、太陽電池モジュールは法面と平行、つまり約30度に設置している」(ソーラーフロンティア)。約3000m2の土地に2232枚のモジュールを設置して出力を368kWとした。年間想定発電量は36万8000kWhだ。

 法面は傾斜しており、崩れたり、水が染み込んだりするような工事は避けなければならない。「今回利用した架台はネジ式で固定しているため、水漏れはなく水密性が保たれる。加えて、ブロックを張って水密性を高めている管理水位よりも設置位置の方が高い。予想以上の水害などがなければ問題はないと考えている」(事業計画係)。

図4 小松堀排水路発電施設の外観(クリックで拡大) 出典:ソーラーフロンティア

 松山発電施設(江南区松山)ではほぼ正方形の平地(約5200m2)に設置した(図5)。加賀田組が建設に携わり、太陽電池モジュールを2620枚置いた。出力は432kW、想定年間発電量43万2000kWhの発電所が完成した。

図5 松山発電施設の外観 出典:ソーラーフロンティア

農業がエネルギー問題を改善する

 未来の亀田郷の姿はどのようなものなのだろうか。東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構との共同事業では、図6のような絵を描いた。農業と太陽光発電システムをより強固に結び付けるアイデアなどが盛り込まれている。「共同事業では持続可能性の高い農村環境整備としてどのような技術を利用できるのかを最大限に考えた。現時点では2カ所の太陽光発電所以外には具体的な計画はないものの、今後とも農業者として多面的な農地の機能の発揮を進めていきたい」(事業計画係)。

図6 未来の亀田郷(クリックで拡大) 出典:ソーラーフロンティア
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