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» 2014年06月27日 09時00分 UPDATE

和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(2):エネルギー不要の技術あり、環境から少しずつ回収して使う (3/4)

[和田憲一郎(エレクトリフィケーション コンサルティング),スマートジャパン]

飛鳥時代をよみがえらせる

 次に、ローム 研究開発本部 新規事業推進部 部長の谷内光治氏と、コーポレート・コミュニケーショ本部メディア企画部グループリーダーの後藤辰英氏に聞いた(図7)。

yh20140627Wada02_Rohm2persons_400px.jpg 図7 ロームの谷内光治氏(左)と後藤辰英氏

和田氏 ロームは、どのような経緯からエネルギー・ハーベスティングに取り組んできたのか。

谷内氏 技術開発としては10年以上前から取り組んできた。色素増感太陽電池(DSC)などの要素技術も合わせて、自社内だけでなく、大学とともにエネルギー・ハーベスティングの研究を続けている。取り組みがより明確になったのは、当社が2008年の創立50周年を機に、50年後のあるべき姿を見据えた中長期戦略「NEXT50」を打出し、4つの成長エンジンとして、「LSIシナジー戦略」「パワーデバイス戦略」「LED戦略」とともに、「センサネットワーク戦略」を定義してからだ。エネルギー・ハーベスティングはセンサネットワーク戦略の中核的な技術と位置付けている(図8)。

yh20140627Wada02_RohmPlan_513px.png 図8 センサネットワーク技術の位置付け 出典:ローム

 当社の中では、技術開発のみを行うというより、インキュベーションによって新しいビジネスを生み出すという意味合いが強い。というのは、センサネットワークはこれまでにないものをワイヤレスでつなぐことによって、新しいビジネスを生むものだからだ。従来機器を設置できなかった歴史ある建築物などにも設置できたり、社会問題になっている橋梁など、公共インフラをモニターするシステムにも使える。簡便に安価で設置できる可能性があり、社会に役立つシステムが生まれると考えている。

和田氏 エネルギー・ハーベスティングそのものは、ロームの中でどのような開発段階にあるのか。

谷内氏 弊社では研究・開発を一般に6段階に分けている。(1)コンセプト、(2)FS(Feasibility Study)、(3)原理試作、(4)RS(Research Sample)、(5)DS(Design Sample)、(6)CS(Customer Sample)だ。エネルギー・ハーベスティングはRSの段階にあると考えている。まだまだ改良すべき課題がある。

 開発を促進するために、早くから欧州において開発されたエネルギー・ハーベスティングの無線通信規格「EnOcean」に着目し、取り組んできた。現在は、EnOceanアライアンスにも参加し、主幹メンバーも務めさせていただいている。

和田氏 ロームは2014年4月にEnOcean対応のIoT(Internet of Things)ゲートウェイ向け開発キットを発売した。その開発意図は。

谷内氏 開発キットはCPUボード「Armadillo(アルマジロ)-420」をベースに、電源レス・配線レスをうたうEnOcean対応の各種センサーモジュールを組み込んだものである(図9)。ゲートウェイの役目を果たし、インターネットに接続することが可能になる。IoTへの入口となることを期待している。

yh20140627Wada02_RohmIoT_506px.png 図9 IoTゲート向け開発キットの構成 出典:ローム

 テナントビルで増改築の需要があるところなどを適用場所として想定している。というのは、このような場所は、新たに電源配線を設置しにくいからだ。ワイヤレスであれば自由度が増すと考えた。現在パートナー企業であるアットマークテクノを通じて販売している。

和田氏 エネルギー・ハーベスティングの適用例として、奈良県の寺社に設置したと聞いた。

後藤氏 日本の寺社としては初めての試みだ。2014年2月に奈良県葛城市にある當麻寺(たいまでら)に、「EnOceanスイッチシステム」を設置することができた。當麻寺は、飛鳥時代に創建された。国宝や重要文化財を多数収蔵した伽藍三堂などがある。過去の特別拝観時に期間限定のLEDライトアップがあり、とても好評だったので今回、正式に設置することになった。

 設置に当たっては、伽藍三堂が国宝・重要文化財といった指定文化財であることから、建造物を可能な限り傷めないことが必須の条件だった。文化庁の工事認可を得て、歴史的に価値の高い建造物に、ワイヤレスで配線でき、電源の不要なEnOceanスイッチシステムを設置することができた。その結果、暗いお堂の中ではよく見ることのできなかった本堂の當麻曼荼羅厨子(国宝)などが、新たな表情、魅力をもってつぶさに見ることができるようになった(図10)。今後も、各地の寺社・仏閣や美術館など歴史ある場所に設置できればと考えている。

yh20140627Wada02_Taima_419px.png 図10 當麻寺に採用されたEnOceanスイッチシステム(左の柱) 出典:ローム

和田氏 エネルギー・ハーベスティングについて、今後どのような分野に注目しているのか。

谷内氏 2つの分野に注目している。1つはメディカル。バイタルセンシングや予防医学の面で、ワイヤレス・電源不要のエネルギー・ハーベスティングが活用できる分野があるのではと考えている。もう1つは、これに近いヘルスケア分野。健康機器などにセンシング技術などと組み合わせて活用できればと考えている。

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