海洋立国の実力は? 「波力発電」の勝者は誰なのか自然エネルギー(3/3 ページ)

» 2014年08月15日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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10年間に1億ドルを費やす

 同社のプロジェクトは第5世代機「CETO 5」を用いた実験を終え、第6世代機「CETO 6」に切り替わるところだ。CETO 6プロジェクトの事業費は3100万ドルと大きい。オーストラリア再生可能エネルギー局(Australian Renewable Energy Agency)の支援を受けており、政府から合計1100万ドルの補助金を受ける予定だ。2014年8月には最初の5万ドルを確保。この他、オーストラリアクリーンエネルギー金融公庫から2000万ドルの貸付を受ける。これらの資金を投じて、CETO 6プロジェクトの資本コスト(約2500万ドル)を賄う。

 CETO 6プロジェクトでは、最大出力1MWの波力発電機を2016年内に3基設置し、系統に接続する。CETO 5と比較するとCETO 6の出力は4倍に伸びた。これはブイの直径を11mから20mに大型化した効果だという。大型化によるコストアップと出力増加によるコストダウンの効果を足し合わせると、1MW当たりの発電コストを3分の1に低減できた形だ。

 同社のManaging DirectorであるMichael Ottaviano博士によれば、同社はCETOの研究開発に約10年という時間と約1億ドルを費やしたという。なぜこれほど時間と費用が掛かったのか。

 同社はCETO 6の開発手法について説明している。CETO 5とCETO 6の最大の違いはブイの大きさだ。ブイを大型化すると、水中での挙動が変化する可能性がある。同社は数値流体力学モデルを用いた分析を2年間継続した。ほぼ同時期に海中に設置したCETO 5に500個以上のセンサーを取付け、各部に加わる水圧や水流をリアルタイムに測定、1日当たり5Gバイトの測定データを取得した。

 その解析結果を数値モデルに反映し、2013年からCETO 6の設計を開始している。2014年内にCETO 6の実物大モデルをスコットランドの首都エジンバラにある実験センターに持ち込んで最終確認を行う予定だ。

世界初の商用波力発電所を目指す

図5 ウェスタンオーストラリア州と設置場所の位置

 完成したCETO 6を設置するのはインド洋に面するウェスタンオーストラリア州ガーデン島沖だ(図5)。州都パースの南西約30km地点である。ガーデン島は面積13km2の島。長さが10kmある南北に細長い島だ。オーストラリア国防省は同国最大の海軍基地HMAS Stirlingをガーデン島の南端に置いている。CETO 6プロジェクトでは、発電した電力を電力購入契約(PPA)に従って同海軍基地へ売電する予定だ。

 その後はどうなるのだろうか。波力発電所の商業化だ。Michael Ottaviano氏によれば、2016年以降、CETO 6システム自体を他国のパートナー企業にライセンス販売する予定だ。

 同社は2020年までに出力1000MWの波力発電所を立ち上げる計画を明らかにしている。CETO 6の性能をさらに2倍に高めることができれば、500台の装置を設置することで実現可能になる計算だ。

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