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» 2014年09月22日 07時00分 公開

小寺信良のEnergy Future:ヘラクレスの「戦い」を覚悟したドイツの野望と痛み、日本はどうか (4/5)

[小寺信良,スマートジャパン]

電力を消費する時刻を「ずらす」とどうなる

 太陽光発電は昼間にしか動かないが、家庭内では昼夜を問わず電気を使う。図7に示したグラフは、ある家庭における電力消費量(灰色)と太陽光発電量(青)を比較したものだ。10月のデータであるため、既に日が短くなっている。太陽光発電の最大出力は約5kWだ。

図7 自家消費を増やすための2つのソリューション 出典:スティーベルエルトロン

 昼間(8時〜18時)は需要を上回る電力を太陽光発電から得ているが、それ以外の時間帯は系統電力から買うしかない。購入する電力を減らすためには、グレーの部分の電力消費を、昼間の時間帯にシフトする必要がある。電力だけでなく、蓄熱によってエネルギーの節約も同時に考える。

 需要と供給をうまくフィッティングさせるためには、電力のマネジメントシステムが必要だ。例えば「Sunny Home Manager(サニーホームマネジャー)」という製品が、この問題を解決する(図8)。太陽光発電用のパワーコンディショナーの大手であるドイツSMAが開発した高機能なHEMS(家庭用EMS)である*5)

 中身は小型のコンピュータ。インターネットへ接続して明日の天気予報を取得し、太陽光発電で得られる電力を予測する。図8右下にあるグラフのグレーの部分が、快晴の場合の発電量、黒い太線が、天気予報に基づいた実際に得られるであろう電力だ。黒い太線が大きな値を示す時間帯に、消費電力が大きい家電を使うとよい。Sunny Home Managerにそのような家電を登録しておくと、何時ごろにどの家電を使えば、発電と消費がうまくフィットするか、お勧めしてくれる。例えば洗濯機と掃除機はお昼ごろ一度に使えるが、食洗機は時間をずらした方がよい、といった具合だ。

*5) 一般的なHEMS同様、太陽光発電の出力や売電量、系統からの買電量、家庭内の電力消費量、蓄電池の容量を見える化する機能を備えており、一部の機器の自動制御も可能。

図8 天気予報を利用して太陽光発電と家電のマッチングをする装置の利用イメージ 出典:スティーベルエルトロン

 2012年に実際の家庭に導入して1年間の実証実験を試みたところ、総発電量の30%を自給自足できた(図9)*6)。世帯消費電力(6027kWh)のうち、3割が太陽光発電の自家消費(1806kWh)によるものという意味だ。計算上の自家消費率(自家消費電力量÷太陽電池発電量)は39%なので、先ほどの30%という数字は優秀だといえるだろう(家電の登録が完璧だったときに自給自足率が39%になる)。

*6) 出力4.95kWという太陽光発電システムを導入した5人家族で実験した。4.95kWという数字は日本の平均導入量とも近い値だ。図9の左下にあるグラフは1月から12月までの1カ月ごとの実験結果を示している。上のグラフは世帯の消費電力量、下のグラフは太陽光発電システムの発電量を示している。それぞれの色の意味は、系統からの買電量(赤色)、太陽光発電でまかなった電力(濃い緑色)、黄緑色は自家消費電力量(黄緑色)、売電量(黄色)。

図9 サニーホームマネジャーを使用した実証実験 出典:スティーベルエルトロン

 ドイツ国内では、太陽光発電システムを設置している家庭は既に200万世帯に達しており、かなり普及しているといえる。ゼロエネルギーだけでなく、プラスエネルギーハウスも現在の技術レベルで実現できるところまで来ているという。そうなると太陽光で発電した電力で自宅分を全てまかない、売電もできる。

 SMAは、ドイツ国内で導入された全ての太陽光発電システムの総出力を表示するWebサイトを開設している*6)。画面左は地域ごとに最大出力の何%を発電しているかを示しており、右上は日の出から日没までの発電量、右下は現在(または指定した時刻)の総発電量をスピードメーターのように表示している。地図下のコントロールバーを使い、過去にさかのぼってどの地方の効率が良かったといった情報を、時間軸に沿って再生する機能もあり、見ていてなかなか楽しい。こういったモチベーションを上げるための可視化も、重要な要素だ。

*6) SMAはドイツに導入された全太陽光発電システム(合計出力36.76GW、2014年6月30日現在)のうち、約13%の実発電データを把握している。これは同社の太陽光発電システム監視ソリューション「Sunny Portal」から得た値だ(関連記事)。ドイツ連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)に登録された全発電システムのデータを用い、同社の実データを線形外挿することで、リアルタイムのデータを計算している。SMAのサイトのURLはこちら。なおドイツ全国の平均消費電力は約60GWであり、太陽光発電の規模が非常に大きいことが分かる。

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