津軽、盛岡、次は関東? 木を利用したバイオマス発電自然エネルギー

タケエイは2014年10月、岩手県花巻市で木質バイオマス発電事業を立ち上げると発表した。事業規模は20〜30億円。2016年度中の売電開始を狙う。燃料の原料から燃料、発電所まで地域で完結した形を採る。

» 2014年10月21日 11時50分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 岩手県花巻市(南側)と青森県平川市の位置

 タケエイは2014年10月、岩手県花巻市で木質バイオマス発電事業を立ち上げると発表した(図1)。事業規模は20〜30億円。2016年度中の売電開始を狙う*1)

 発電所の規模は出力6250kW。運転計画は、年間340日(24時間)というもの。一般家庭1万4000世帯分の年間消費電力量を賄うことが可能だとした。二酸化炭素(CO2)の排出削減量は年間1.7万トン。

*1) 東北電力は2014年9月30日、再生可能エネルギー発電設備に対する契約申し込みを保留すると発表した(関連記事)。これにはバイオマス発電も含まれる。「先行する津軽バイオマスエナジーでは東北電力への事前相談だけで3〜4カ月を要した。東北電力は事前相談を現在も受け付けており、花巻市の場合も事前相談などの手続き中に、新しい契約申し込みの条件が決まるだろう」(タケエイ)。同社は固定価格買取制度(FIT)を利用した東北電力への売電以外に、新電力(PPS)との買取契約も狙う。

地域から燃料を調達

 同社の木質バイオマス発電所の燃料は、原料として、森林の間伐材を用いる。「原料となる間伐材などほぼ全量を花巻市から数十km圏内にある森林事業者から調達する。調達量は年間7〜8万トンだ」(同社)。

 調達した間伐材を木材チップとして加工し、これを燃料として発電する。発電事業者はタケエイが設立する特定目的会社(SPC)の花巻バイオマスエナジー。「チップ化事業者は地域の出資も募って立ち上げたい」(タケエイ)。このように燃料の原料から燃料、発電所まで地域で完結した形を採る(図2)。

図2 バイオマス発電事業のスキーム 出典:タケエイ

震災対応から復興、林業再生へ

 タケエイは廃棄物処理やリサイクルに強みのある企業。2004年にはバイオマス発電用の木質チップ供給を開始。これは建設廃棄物の処理過程で大量に生じる廃木材をチップ化したものだ。

 東日本大震災後に岩手県や宮城県、福島県で災害廃棄物の処理やリサイクル事業を担った経験から、復興支援に役立つ林業再生と組み合わせた木質バイオマス発電事業に参入した*2)。第1弾は2014年3月に発表した青森県平川市における発電事業(津軽バイオマスエナジー)。

 「花巻市の木質バイオマス発電は、津軽に次ぐ第2弾となる。花巻市は津軽同様林業が盛んであり、発電事業のスキームは津軽とほぼ同じになる予定である」(タケエイ)。発電所の設備も津軽と同じになる見込みだ。

*2) 林業は植樹から伐採(主伐)までに数十年を要する息の長い事業だ。植樹から20〜30年ほどすると、樹木の本数を減らして、残った樹木が大きく育つよう、間伐作業が始まる。このとき、大量の間伐材が発生するものの、山林からの搬出コストを賄うことができず、放置されることも多い。間伐材を木質バイオマス発電で資源として使うことで、林業の事業サイクルがうまく回るようになる。

電力需要地のそばでも発電へ

 同社は2014年10月、関東甲信地方で剪定材を回収する事業を進めてきた富士リバースを子会社化した。富士リバースは公園などの公共施設の伐採材や造園業・建設業からの剪定材を集め、木質系チップを製造。酪農事業の敷料や有機肥料の原料として利用してきた。

 「今後は関東甲信地方で、富士リバースの木質系チップを利用した木質バイオマス発電事業を検討していく」(タケエイ)。

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