平等院で平安時代の「色」を再現、LED照明で実現LED照明(1/2 ページ)

平成の大改修を終えた平等院鳳凰堂。池を正面に、左右対称の赤い柱が美しい。この鳳凰堂を夜間に照らし出すLED照明が完成した。どのような工夫があるのだろうか。

» 2014年11月04日 11時50分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
図1 京都府宇治市と平等院の位置

 世界遺産である平等院(京都府宇治市宇治蓮華)の夜間特別拝観が開かれた(図1)。2012年9月から続いていた平成の大改修が2014年9月末に完了したためだ。創建当初の壮観な姿を見ることができるという。

 夜間拝観の目玉は中央に位置する国宝の鳳凰堂*1)。十円硬貨の裏面にも描かれている左右対称の建物だ。

*1) 平等院は9世紀の貴族である源融の別荘(別業)として立ち上がり、その後、藤原道長の別荘に変わる。道長の息子である頼通がこれを寺院として改めた。鳳凰堂が建立されたのは1053年。

明るさだけでは不十分

 夜間用のLED照明を平等院に納入したのは東芝ライテック。同社によれば、通常のLED照明とは異なる課題が幾つもあったという。古典建築物に対する夜間のライトアップ照明であるため、単なる明るくくっきりとした照明ではだめだ。明るさ制御や色温度はもちろん、周囲の景観と建物とがバランス良く見える照明でなければならない。

 このため、LED投光器の開発は現地の調査と関係者へのヒアリングから始まったという。まずは明るさだ。鳳凰堂は正面の中堂と左右の両翼廊からなる(背面の尾廊は正面からは見えない)。左右対称の建築形状が映えるよう、中堂を強調して両翼廊を少し暗くする。場合によってはその逆が可能なように設計した」(東芝ライテック)。

 要求はあと3つある。中堂内の中央に位置する如来像(丈六阿弥陀如来坐像)が映えること、屋根に据えられている一対の鳳凰が明るく照らし出させることだ。

 もう1つ難しいのは映り込み。鳳凰堂は阿字池という池の中島に立ち上がっている。平等院によれば極楽の宝池に浮かぶ宮殿のように美しく見えるのだという。池の水面に鳳凰堂が映り込むとよい(図2)。池に光を当てないようにする工夫が必要だ。

図2 LED照明で照らし出された平等院鳳凰堂(クリックで拡大) 出典:東芝ライテック
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.