蓄電池電車で動力費5割減、JR九州蓄電・発電機器

JR九州は2014年11月27日、蓄電池で走る電車の量産に着手すると発表した。「架線式蓄電池電車」と呼ぶ。交流電化区間で充電する蓄電池電車としては日本初だという。動力費の5割削減を目指す。

» 2014年12月05日 11時50分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 JR九州は2014年11月27日、非電化区間で蓄電池を利用して走行する電車の量産に着手すると発表した(図1)。「架線式蓄電池電車」と呼ぶ。交流電化区間で充電する蓄電池電車としては日本初だという。

 「ディーゼルを用いる現在の気動車と比較して動力費を5割削減することを目標とする」(JR九州)。

図1 試作車の走行試験の様子 出典:JR九州

 2016年秋に1編成2両を先行導入し、2017年春に6編成12両を追加導入する計画。「導入する区間は、筑豊本線の福北ゆたか線の一部(直方〜折尾、14.0km)と若松線(折尾〜若松、10.8km)を検討している」(JR九州)。

 図2には福岡県北部を示した。赤い部分が交流電化区間。南から直方〜折尾(直方市、鞍手町、中間市、水巻町、北九州市八幡西区)。青い部分が非電化区間。折尾〜若松(八幡西区、若松区)である。

図2 蓄電池電車を投入する区間

 同区間を選んだ理由は3つある。まず、蓄電池で走行する距離(線区長)が搭載可能な蓄電池の容量に適していること。次に、交流電化区間(福北ゆたか線)と非電化区間(若松線)を直通運転できるという運用上の利点があることだ。

 北九州市は世界の環境首都を目指しており、市内を走る若松線への導入がふさわしいとした。ディーゼル機関を用いる従来の気動車と比較すると、二酸化炭素排出量が減り、騒音が低減する。ブレーキからは回生電力も得られる。

常時充電、回生電力も充電

 架線式蓄電池電車は最高時速120kmで走行可能。重量(1編成2両)は70トン。リチウムイオン蓄電池を搭載する。

 同電車の走行パターンはこうだ(図3)。交流電化区間では、2万Vの交流が流れる架線から電力を得てモーター走行する。同時に常時、架線から得た電力で蓄電池に充電する。

 非電化区間に入るとパンタグラフを下ろし、蓄電池の電力を用いて走行する*1)。減速時には運動エネルギーを回生し、蓄電池へと充電する。

*1) 「万が一、非電化区間走行中に蓄電池の容量がなくなった場合には、他の列車で救援する」(JR九州)。

図3 電化区間と非電化区間での動作 出典:JR九州

 JR九州は2012年4月から817系の車両を利用して改造試作車の開発を開始し、2013年5月から福岡県内で走行試験を実施していた。図1がその様子だ。走行試験時には容量90kWhの蓄電池を搭載(関連記事)。1000V入出力という条件だった。「2016年に投入する車両については、電池の仕様を検討中であるため、蓄電池の容量は未定だ」(JR九州)。

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