暖房を止めた札幌市の地下鉄、電気料金の再値上げで節電拡大エネルギー管理

札幌市の交通局が12月〜3月の4カ月間にわたって、市営地下鉄の暖房を原則停止する。冬の寒さが厳しい札幌だが、電力需給状況の改善に加えて電気料金の再値上げに対応する措置だ。電車の中は外気よりも温度が高いことから、早朝などを除けば暖房は不要と判断した。

» 2014年12月08日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「これまで間欠運転していた車内暖房について、車内温度が低い早朝等を除き、原則停止することにしました」。札幌市の交通局は今冬の節電対策として、地下鉄の車内暖房を12月1日から3月31日まで停止することを決めた(図1)。札幌市内を走る3路線の地下鉄すべてが対象になるほか、路面電車でも朝夕のラッシュ時に暖房を停止する。

図1 札幌市営の地下鉄。出典:札幌市交通局

 交通局によると、地下鉄のホームやトンネル内の温度は暖房を入れなくても外気温より高くなるうえに、乗客は外気温に合わせた服装で乗車することから、寒さよりも暑さを指摘する声が多い。温度が低くなる早朝などに限定して暖房を入れるだけでも、1日を通じて車内が過度に寒くなることはないと判断した。

 こうした徹底した節電対策を実施する背景には、北海道内の電力需給状況を改善させる目的のほかに、北海道電力が2年連続で実施した電気料金の値上げに対応する狙いがある。北海道電力は2013年9月と2014年11月に2回の値上げを実施して、企業向けの電気料金の単価は1.5倍以上にはねあがった。

 札幌市の交通局は多額の債務を抱える状況から、電気料金を含めてコスト削減による収益の改善が求められている。市営地下鉄では2011年度から節電対策を実施して、電力使用量の削減に取り組んできた(図2)。ただし全体の半分近くを占める電車用の電力使用量は増加傾向にある。

図2 札幌市営地下鉄の電力使用量の推移(3路線の合計)。出典:札幌市交通局

 2014年度の冬は車内の暖房を原則停止するほか、室内灯も1両あたり2本を間引く。さらに駅構内の照明やエスカレータ、自動改札機なども一部の運転を停止する。交通局の庁舎や車両基地でも空調・照明を抑制して、電力使用量の削減に徹底的に取り組む方針だ。

 今後も毎年1%程度の削減を続けて、2018年度には2013年度と比べて5%(680万kWh)の削減量を目指す。その目標に向けて駅構内の照明を順次LEDに切り替えていくほか、電車のブレーキ中に発生する回生電力の使用量を増やす。

 札幌市の地下鉄では2013年度に、蓄電池を内蔵した回生電力貯蔵装置を2カ所の変電所に導入した。ブレーキ中の電車から送られてくる回生電力を蓄電池に充電しながら、必要に応じて放電して加速中の電車に電力を供給することができる(図3)。2018年度までに追加で2カ所の地下鉄変電所に回生電力貯蔵装置を導入して、合計4カ所の体制で回生電力を有効に利用する計画だ。

図3 蓄電池式の回生電力貯蔵装置を使った電力供給の仕組み。出典:札幌市交通局

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.