水素を電力の缶詰に、10kWの太陽光で動くステーション電気自動車

ホンダと岩谷産業は2014年12月15日、北九州市において小型の「スマート水素ステーション」を設置したと発表した。最大の特徴は水素を作り出すエネルギー源として太陽光発電システムを利用したことだ。出力10kWのシステムと接続した。

» 2014年12月17日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 北九州市若松区と設備の位置

 ホンダと岩谷産業は2014年12月15日、北九州市において小型の設備である「スマート水素ステーション」を設置したと発表した(図1)。最大の特徴は水素を作り出すエネルギー源として太陽光発電を利用したことだ。

 「設備を設置した北九州市エコタウンセンター(若松区向洋町)には、出力10kWの太陽光発電システムが備わっている。この電力を利用した。太陽光発電システムから十分な出力が得られない場合は、系統電力も利用できる」(岩谷産業)。両社は今後、風力発電などの再生可能エネルギーを用いることも視野に入れているという。

 スマート水素ステーションでは、水素の製造、蓄積、供給に必要な全ての機器をおよそ3.2m×2.4m×2.4mの「箱」に収めている(図2)。このため、基礎工事が終わった現場に箱を持ち込むことで短期間に水素ステーションが立ち上がる。「約1日で完成した」(ホンダ)。必要な工事は土台となる基礎の他、水の配管と電力線の配線。外部から水と電力を供給することで、1日当たり1.5kgの水素を生成、内部に約18kgまで蓄えることが可能だ*1)

*1) ホンダは圧縮機を使わず、35MPa(350気圧)の高圧水素を直接電気分解で得る高圧水電解システムをスマート水素ステーションに組み込んでいる。圧縮機の動作に必要なエネルギーを節減できる。

図2 設置したスマート水素ステーションの外観(クリックで拡大) 出典:ホンダ

電力を水素の形で蓄える

 「今回は実証実験のために、北九州市に設置した。実証実験としてはさいたま市の事例に続く2例目となる。設置したスマート水素ステーションの仕様は、さいたま市のものと同じだ」(ホンダ)。

 さいたま市の事例ではゴミ焼却の熱を利用して発電し、その電力を水素製造に使っている。さいたま市の事例でも水素製造のために、化石燃料を使うことはしていない。今回は製造時に排出する二酸化炭素の量をより減らした形だ。

 ホンダは燃料電池車「FCXクラリティ」*2)を利用して、家屋に電力を送り込む「V2H(Vehicle to Home)」の他に、非常用の電力を燃料電池車から蓄電池に継ぎ足し充電する「V2L(Vehicle to Load)」の実証実験を北九州市で続けている。FCXクラリティは水素タンクに十分な水素があれば、一般家庭の消費電力量の6日分に相当する60kWhの電力を供給可能だ。

 今回の事例は「太陽光−電力」というエネルギーの流れに水素を挟み込み、水素を蓄積可能なエネルギー媒体として利用する形の実証実験と捉えることもできる。

*2) FCXクラリティはホンダが2008年からリース販売を開始した燃料電池車。同社は2015年度内に燃料電池車の量産車を国内で発売する(関連記事)。

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