パワコンを削って収益性向上、熊本の大規模太陽光自然エネルギー

双日は2014年12月11日、熊本県にメガソーラー「球磨錦町(くまにしきまち)太陽光発電所」が完成したと発表した。約12.77MWの太陽電池モジュールに対して、パワーコンディショナーの容量を約9MWに抑えた。狙いは収益性の向上だ。

» 2014年12月17日 19時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 熊本県錦町と発電所の位置

 双日は2014年12月11日、熊本県にメガソーラー「球磨錦町(くまにしきまち)太陽光発電所」(錦町木上北)が完成したと発表した(図1、図2)。

 最大の特徴は、約12.77MW分の太陽電池モジュールを設置して、そのうち約9.0MWだけを系統に出力することだ。系統出力分よりも設置容量が40%以上も多い。収益性を考えた結果、このような設計になったのだという。

パワーコンディショナーを削る

 同発電所ではなるべく多くの太陽電池モジュールを設置するために、モジュールの設置角度を10度とした。太陽電池モジュールの総出力が約12.77MWと決まったのち、パワーコンディショナー(PCS)の容量を絞った形だ。「総出力だけを考えれば太陽電池モジュールの最大出力と同容量のPCSを用意すればよい。しかし、PCSは高価だ。そのため、PCSの出力をどの程度に抑えたときに錦町の立地で最も収益性が高くなるかを計算した」(双日)*1)

 太陽電池モジュールが最大出力となるのは正午前後のわずかな時間だ。それ以外の時間は最大出力に達しない。このような日照の性質を上手く利用した手法だということができる。

 出力を低圧接続の上限である50kW未満に抑えた小規模な太陽光発電所では、双日の事例と似た手法の採用事例が多い。低圧で接続するために、PCSの出力をまず50kW未満(例えば49.5kW)に抑え、その後、太陽電池モジュールの総出力をどの程度増やすと発電量を最大化できるかという発想だ(関連記事)。

*1) 「系統に9MWを出力するという設計は、電力会社が提示した連系可能容量(の上限)とは無関係である」(双日)。

図2 球磨錦町太陽光発電所の外観(クリックで拡大) 出典:双日

ドイツの経験を国内に生かす

 同発電所は他企業の所有地約16万6000m2を20年間賃借し、約40億円を投じて完成したもの。

 双日は100%子会社である未来創電球磨錦町を設立後、未来創電球磨錦町が事業主となって2013年9月に着工した。富士電機が設計・調達・建設(EPC)を担当。事業用地約15万8000m2にLG電子の太陽電池モジュールと、富士電機のパワーコンディショナーを設置した。固定価格買取制度(FIT)を利用して、2014年12月1日に九州電力に売電を開始。年間発電量は非公開。一般家庭約3500世帯の年間消費電力量に相当するという。

 双日は国内よりも先に、まずドイツで太陽光発電事業に取り組んでいる。早くも2010年5月には出力3MWの発電所を立ち上げた。投資効率もよい。総事業費が約10億円であるため、1MW当たり3.3億円である。その後、同じくドイツで2011年10月に24MWの発電所(1MW当たり約2.6億円)を立ち上げている。

 国内向けの太陽光発電事業について発表したのは2013年4月。北海道から九州まで、国内4カ所に合計350億円を投じ、106MWの発電所を建設する計画だ。

 2014年10月には、球磨錦町太陽光発電所に先駆けて出力9.14MWの「小清水太陽光発電所」(北海道小清水町)が完成している。青森県六ヶ所村と愛知県美浜町の太陽光発電所は現在、工事中であり、順次完成するという。

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