60セル品の出力が300Wを超える、多結晶シリコン太陽電池蓄電・発電機器

中国Jinko Solar Holding(ジンコソーラーホールディング)は多結晶シリコン太陽電池モジュールの出力において、新記録を達成したと発表。60セル品の出力が306.9Wに達した。

» 2014年12月19日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 中国Jinko Solar Holding(ジンコソーラーホールディング)は2014年12月8日、太陽電池モジュールの出力において、新記録を達成したと発表した。多結晶シリコン太陽電池セルを60枚用いた「Eagle+」太陽電池モジュールの出力が306.9Wに達した*1)。同社によれば60セルの多結晶シリコン太陽電池モジュールの平均出力は約255Wである。

 同社のCEOである陈康平(Kangping Chen)氏によれば、今回のEagle+の高出力品は量産に近い状態だという。なお、同社は2014年5月に出力275WのEagle+量産品を発表している(図1)。

*1) 上海に立地する独立系の検査機関であるドイツTÜF Rheinlandのテストセンターで計測した値である。標準テスト条件(STC)に従ったという。

図1 多結晶シリコン太陽電池モジュール「Eagle」の量産品(出力270W)の外観 出典:Jinko Solar Holding

既存の材料技術を組み込む

 出力を増やすために同社が導入した技術は大きく2つある。いずれも米デュポンの技術だ。まずは太陽電池セルの電極用の導電ペースト「ソーラメット(Solamet)」の採用だ。変換効率向上に役立てた。「テドラーフィルム(Tedlar)」はポリフッ化ビニル樹脂フィルムの一種であり、太陽電池のバックシート材料として用いた。

 Jinko Solar Holdingによれば、Eagle+は効率が高いだけでなく、2種類の劣化を起こしにくいという。まずはPIDだ*2)。85度、湿度85%の条件下に1000時間暴露することでPID耐性を確認した。もう1つはスネイルトレイル*3)。発生を防ぐために太陽電池セルの封止材料に酸化防止剤を添加した。

*2) Potential Induced Degradation(電圧誘起出力低下)現象が発生する条件は2つある。太陽電池モジュールを高温多湿の環境下で利用すること。もう1つはメガソーラーなどで直列に接続し、高電圧下で利用することだ。
*3) スネイルトレイルとは、太陽電池セルの表面の色が濃くなり、かたつむり(スネイル)がはったように見える現象。出力は直ちに低下しないものの、内部に封止されたシリコンに微細な割れが生じており、不具合の原因となる。

量産規模が大きい

 Jinko Solar Holdingは太陽電池生産を垂直統合している。年間生産能力は2014年9月末現在、シリコンインゴットとシリコンウエハーがそれぞれ2.3GW、太陽電池セルが1.8GW、太陽電池モジュールが2.8GWだという。同社によれば、世界シェアは世界第4位だという。

 図2はJinko Solar Holdingが2014年10月に発表した中国江西省カン州市石城県で建設中の出力200MWの大規模太陽光発電所の外観だ。子会社であるJinko Solar Powerが地方政府の許可を受けて、工期4年で完成を目指す。投資額は16億人民元(2014年12月現在の為替レートで約300億円)。1MW当たりに換算すると1億5000万円である。

図2 出力200MWの大規模太陽光発電所(クリックで拡大) 出典:Jinko Solar Holding

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