太陽電池は「効率優位」にシフト、米企業が予測蓄電・発電機器

調査会社である米NPD Solarbuzzは、2014年10月、さまざまな太陽電池の方式がどのように移り変わっていくのか、製造品のシェアについて2018年までの予測を発表した。シリコンウエハーを使う製品のうち、高効率品でないものはほとんど市場に残らないという。

» 2014年10月16日 11時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 調査会社である米NPD Solarbuzzは、2014年10月、さまざまな太陽電池の方式がどのように移り変わっていくのか、製造品のシェアについて2018年までの予測を発表した。

 大きな流れはこうだ。安くそこそこの性能のものが淘汰されて、高性能品が伸びていく。同社のバイスプレジデントであるFinlay Colville氏によれば、ここ2年間は主にコスト削減に重点が置かれてきたが、今後は生産能力拡大の際に、(どのような高品位な太陽電池を製造するのか)技術ロードマップを導入する時期に来ているという。

太陽電池級が強い

 同社は大量に生産されている太陽電池を大きく3種類の方式に分けて予測した。太陽電池級シリコンウエハーを用いたもの*1)、太陽電池級よりも品質が高い半導体級シリコンウエハーを用いたもの、シリコンウエハーを用いず蒸着技術を使って製造する薄膜を用いたものだ。

 2014年に導入される太陽電池では、太陽電池級が89%を占めるとした。太陽電池モジュールメーカー上位20社のうち、16社が手掛けている方式だ。半導体級は3%。米SunPower(関連記事)やパナソニック(関連記事)が製造する。蒸着技術を用いたものの比率は約8%。ソーラーフロンティアのCIS(関連記事)や米First SolarのCdTe(関連記事)が主要企業だ。

*1) シリコンウエハーを製造する際、いったんケイ素原子(シリコン)以外の不純物をなるべく取り除く。半導体としての性能を高めるためだ。電子部品を製造する際には、シリコンの純度を99.999999999%(イレブンナイン)程度に高める必要がある。しかし、太陽電池の場合は99.99999(セブンナイン)程度で機能する。これが半導体級と太陽電池級の違いだ。なお、太陽電池ではnタイプとpタイプの半導体が必要になるため、高純度のシリコンウエハーに制御された条件で再度不純物を追加する。

2つのシナリオを提示

 NPD Solarbuzzは2018年までにこれらの太陽電池の比率がどのように変わっていくのか、2つのシナリオを提示した。最も起こりそうなPV技術ロードマップシナリオと、技術開発が素早く進んだ場合の加速度的PV技術ロードマップシナリオだ。

 最も起こりそうなシナリオでは、薄膜と半導体級を合わせた太陽電池モジュールの供給量が2014年の5.3GWから、2018年には14.5GWに増える。半導体級では新規参入ということができる2社の動向を取り上げた。米国の住宅向け太陽電池市場に強みがある米SolarCityと、FirstSolarだ。いずれも他社を買収することで、半導体級に参入する。SolarCityはSilevo、FirstSolarはTetraSun(関連記事)の技術を用いる。

 加速度的なシナリオでは、半導体級の成長率が著しい。2015年以降に200%成長し、2018年には7.6GWに達するとした。

 図1は加速度的なシナリオの基で、各種の太陽電池がどのようなシェアになっていくかを示した。太陽電池市場規模はこれまで4年で2倍の規模に成長しており、今後も成長が続くため、図1中で比率が変わらない=太陽電池市場全体の成長率と同じ、という意味になる。

図1 加速度的太陽電池技術ロードマップシナリオに従ったシェアの変化予測 出典:米NPD Solarbuzz

 図1の凡例は上から順に、薄膜(アモルファスシリコン、微結晶シリコン)、薄膜(CIGS、CIS)、薄膜(CdTe)、太陽電池級の多結晶シリコン(高効率)、太陽電池級の多結晶シリコン、半導体級の単結晶シリコン(高効率)、半導体級の単結晶シリコン、nタイプウェハーを用いたシリコンウエハー(2種類)である。パナソニックのHIT太陽電池の最新型は、この「c-Si n-type Premium」に含まれている。

 図1を見ると、藍色で示した多結晶(高効率)とオレンジ色で示した単結晶(高効率)の比率が高まっており、2018年時点ではシリコンウエハーを使う製品のうち、高効率品でないものはほとんど市場に残らないことが分かる。

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