総発電量の40%弱を風力で、2014年のデンマーク自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2015年01月15日 12時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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デンマークの事例は北海道と比較できる

 デンマークを日本国内の地域と比較するなら、北海道が適切だろう。デンマークの面積は4.3万km2、そこに人口560万人が暮らす。北海道の約半分の面積に、ほぼ同じ人口という形だ。

 デンマークの年間発電電力量は337億kWh(2011年)。北海道電力は342億kWh(2013年度)。ほぼ一致している。デンマークは欧州でも風況のよい地域として知られている(関連記事)。北海道には国内の風力発電の導入ポテンシャル量のうち、49%が集中している*1)

 北海道はデンマークのように風力発電への依存度を高めることができるのだろうか。デンマークが有利な点は2つある。第1にデンマークには国際連系線がそろっている(関連記事*2)。デンマークは図1に示したように南に陸続きのドイツ、北にスカゲラック海峡を挟んでノルウェー、東にカテガット海峡を挟んでスウェーデンと接している。ドイツとは210万kW、ノルウェーとは104万kW、スウェーデンとは130万kWの連系線がある。

 北海道電力は他の系統と1カ所でしかつながっていない。北海道本州間連系線(60万kW)だ。2019年には90万kWまで増強する計画があるものの、デンマーク並みの導入を目指すなら十分ではない可能性がある(関連記事)。

*1) 環境省がとりまとめた2010年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書によれば、全国の導入ポテンシャル量は2億8294万kW。そのうち、北海道が1億4000万kWを占める。
*2) ただし、デンマーク本土と首都コペンハーゲンを置くシェラン島は別の系統に分かれている。2つの地域を結ぶ連系線の容量は60万kW。

連系線だけではない

 もう1つは熱電併用(コージェネレーション)の大量導入だ。コペンハーゲンの平均気温は1月には1.4度まで下がる。暖房が必要だ。デンマーク政府は1975年にコージェネレーションの大量導入に踏み切った。発電で生み出す熱を暖房に用いることによって、国全体が消費する化石燃料を減らすことが目的だ。

 2006年にはコージェネレーションによる発電が42.6%まで上昇。効率もよい。最新のコージェネレーション発電所の総合エネルギー効率(電力+熱)は95%まで高まっている。理想的な数字だ。当初は天然ガスを主な燃料としていたが、次第にバイオガスの比率が高まっており、図2からもこのような傾向を読み取ることができる。デンマークは2030年に石炭を全廃しようとしており、風力とコージェネレーションで実現する形だ。

 このコージェネレーションが風力の出力変動抑制にも役立っている。コージェネレーションの導入規模が大きいため、風力を大量導入しても系統の安定性を保つことができる。

 北海道電力は大規模なコージェネレーション対応の発電所を導入していない。連系線とコージェネレーション以外にも系統安定化に役立つ技術はある。出力を素早く変更しやすいガスタービン発電の他、揚水発電、水力発電などだ。いずれも大規模な投資が必要であり、風力発電の大量導入を目指す国の施策がなければ実現は難しいだろう。

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