小売の全面自由化が始まると、電力会社から別の小売事業者へ契約を切り替える「スイッチング」を求める利用者が数多く生まれる。スイッチングの申込は2016年1月から受け付ける予定だ。全国の需要と供給を調整する「広域機関」がシステムを運営してスイッチングの手続きを迅速に処理する。
第27回:「スマートメーターのデータを小売事業者へ、電力使用量を60分以内に提供」
電力システム改革の第1段階で、2015年4月に「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)が業務を開始する。この広域機関の役割は2つあって、1つは地域を越えて全国レベルの需要と供給の調整機能を果たす。もう1つは電力会社から別の小売事業者へ契約を切り替える「スイッチング」を支援する役割である。
電力を利用する需要家が小売事業者にスイッチングを申し込むと、その情報をもとに広域機関の「スイッチング支援システム」が手続きを開始する(図1)。スイッチング支援システムを経由して電力会社の送配電部門(一般送配電事業者)にも情報が伝わって、契約の変更後も滞りなく電力が供給される仕組みだ。
スイッチングの申し込みは小売の全面自由化に先行して2016年1月に受付を開始することになっている。ただし現在開発中のシステムが受付開始に間に合わないケースを想定して、システムを使わない方法でも手続きを進められるように準備する計画だ。
契約の変更手続きを進めるためには、電力会社から3種類の情報を取得する必要がある。需要家の設備に関する情報のほか、電力使用量の実績データ、さらにスマートメーターの設置状況(動静情報)も含む。この3種類の情報を広域機関が電力会社の送配電部門から取得して小売事業者に提供できるようにする(図2)。
小売事業者は取得した情報をもとに契約プランを作って需要家に提案する。需要家が実際に契約の変更を小売事業者に申し込むと、スマートメーターの設置状況によってメーターの取替工事が手配される段取りだ。こうしたスイッチングの一連の手続きは、遅くとも全面自由化を実施する前の2016年3月にはシステムで対応できるようになる。
スイッチング支援システムが稼働すると、小売事業者が送配電ネットワークを利用して電力を供給する「託送」の異動を含めて短期間に手続きを完了することができる。需要家も小売事業者も電力会社の送配電部門とのあいだで面倒なやり取りにわずらわされることがない。小売の全面自由化を推進するための重要なシステムである。
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