2011年度から巨額の赤字を出し続けている九州電力の業績が上向いてきた。2014年度は600億円の営業赤字に収まる見込みで、前年度から358億円の改善になる。売上高は再生可能エネルギー関連で大幅に増えるが、販売電力量の減少分があり、前年比4.7%の増加にとどまる見通しだ。
九州電力が3月9日に公表した2014年度の業績予想の中身を見ると、損益は改善するものの、将来に向けた明るい材料はほとんどない。売上高は前年から839億円の増加で、本業のもうけを示す営業損益も358億円の改善を見込む(図1)。2012年度に2994億円の営業赤字を記録した状態と比べれば、赤字額は5分の1まで縮小する。
ただし問題は売上高の増加と赤字の縮小をもたらした要因にある。839億円の売上増の内訳は、電気料金の値上げ効果が340億円、燃料費調整額の増加が230億円、さらに再生可能エネルギーの固定価格買取制度に伴う増加分が賦課金と交付金を合わせて890億円もある(図2)。一方で販売電力量の減少によるマイナスが520億円にのぼる。
販売電力量の減少はコストの面で燃料費や購入電力料の減少につながり、損益を改善させる要因にもなっている。特に燃料費は原油価格の下落もあって、前年比で330億円も減る見通しだ。実際のところ損益の改善額は燃料費の減少額と同程度で、企業努力による効果とは言いがたい。売上高の増加も損益の改善も外的な要因ばかりである。
九州電力は業績予想を公表するにあたって、「原子力に代替する火力燃料費等の増大により厳しい収支・財務状況が続いています」と説明している。はたして原子力発電所が再稼働すれば、黒字に回復するのか。燃料費は減少するものの、販売電力量の低下による売上高の減少が予想できる。原子力発電に伴う燃料費以外のコストの増加もある。関西電力とともに長期的な展望を描きにくい状況が続く。
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