日本海に面した島根県の江津市で大規模な木質バイオマス発電所が完成して、7月1日に運転を開始する。地域の森林から生まれる未利用の木材を中心に年間で11万5000トンの木質バイオマスを利用する計画だ。市の総世帯数の2倍以上にあたる2万4000世帯分の電力を供給することができる。
島根県の中部に位置する江津市(ごうつし)は、中国地方で最も大きな「江の川(ごうのかわ)」が日本海に注ぐところである(図1)。豊富な水と温暖な気候から、市の面積の8割近くを森林が占めている。
こうした地域の森林から発生する用途のない木材を燃料に使って、7月1日に「江津バイオマス発電所」が運転を開始する予定だ(図2)。発電能力は木質バイオマスでは最大級の12.7MW(メガワット)である。
年間の発電量は8600万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると2万4000世帯分に相当する。江津市の総世帯数(1万1500世帯)の2倍以上の規模になる。
豊田通商グループのエネ・ビジョンが2年間かけて建設した。総投資額は50億円で、発電した電力(送電時10.8MW)は固定価格買取制度を通じて全量を中国電力に売電することが決まっている。燃料には森林からの未利用木材を年間に8万3000トンのほか、海外から輸入するパームヤシがら(PKS:Palm Kernel Shell)などを3万2000トン利用する計画だ(図3)。年間の売電収入は最大で24億円を想定している。
バイオマス発電所は「江津地域拠点工業団地」の中にあって、周囲は森林に囲まれている(図4)。古くから林業の盛んな地域だが、近年は木材価格の下落によって低迷が続き、森林を保全するための間伐も十分に実施できない状況にある。伐採から利用・植林・育成までつながる循環型の林業を整備することが課題になっている。
江津市では2010年に策定した「江津市バイオマスタウン構想」のもと、地域ぐるみで木質バイオマスの有効活用を推進してきた。バイオマス発電所の稼働は重要な成果で、地域の林業を活性化させる取り組みとして期待は大きい。
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