ガスと石油の最大手が火力発電所を増強、東京湾岸で2021年に110万kW電力供給サービス

東京ガスとJX日鉱日石エネルギーは共同で運営する神奈川県の天然ガス火力発電所を2倍以上の規模に増強する。最新鋭のコンバインドサイクル方式による高効率の発電設備2基を新設して、合計110万kWの電力を供給する計画だ。小売全面自由化で拡大する新電力に向けて販売する。

» 2015年06月12日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 東京ガスとJX日鉱日石エネルギーは2001年に「川崎天然ガス発電」を共同で設立して、現在は2基の発電設備で85万kW(キロワット)の電力を供給している(図1)。隣接してJXが保有する遊休地があり、新たに2基の発電設備を建設して電力の供給体制を強化する。

図1 「川崎天然ガス発電所」の全景。出典:川崎天然ガス発電

 新設する3号機と4号機は最新鋭のコンバインドサイクル方式を採用して、発電能力は55万kWずつ、合計で110万kWになる見込みだ。2018年の後半から2019年の前半にかけて建設工事に入り、2021年に順次運転を開始する。既存の2基と合わせると195万kWの電力を首都圏で供給できるようになる。

 発電所の場所は東京湾岸の臨海工業地帯にあって(図2)、近くで稼働するLNG(液化天然ガス)の供給基地からパイプラインで燃料の供給を受けることができる。さらに隣には木質バイオマスを燃料に利用する日本最大の「川崎バイオマス発電所」(33万kW)も運転中で、最先端の発電所が集まるエネルギーの一大供給拠点になっている。

図2 発電所の所在地(左)、上空から見た全景(右)。出典:川崎天然ガス発電

 川崎天然ガス発電所では既存の2基を含めて4基すべてがコンバインドサイクル方式による高効率の火力発電設備で構成する。コンバインドサイクル方式はガスタービンで発電した後に、排熱を利用して蒸気タービンでも発電することができる(図3)。現在の火力発電では最も効率が高く、CO2の排出量も少ない。

図3 コンバインドサイクル方式による発電設備。出典:川崎天然ガス発電

 ただし出力が15万kW以上の火力発電設備を新設する場合には環境影響評価の手続きが必要になる。手続きの最初の段階にあたる「配慮書」を6月10日に経済産業大臣や神奈川県知事など関係各所に送付した(図4)。順調に進めば3年程度で手続きを完了して建設工事に入る見通しだ。

図4 環境影響評価の手続き(画像をクリックすると拡大)。出典:川崎天然ガス発電

 東京ガスとJX日鉱日石エネルギーは都市ガスと石油元売りの最大手だが、2020年代に向けて発電設備の増強を急ピッチで進めている。電力とガスの小売全面自由化を機にエネルギー産業の構造が大きく変わる中で、市場規模が20兆円にのぼる電力事業で売上を拡大する狙いだ。

 東京ガスは2020年までに自社と他社の発電設備を合わせて最大500万kWの電力を供給できる体制を整備する。さらに川崎天然ガス発電所の増強計画のほかにも、千葉県で出光興産・九州電力と共同の石炭火力発電所(最大200万kW)を建設する計画がある。一方のJX日鉱日石エネルギーも全国各地にある製油所の敷地を利用して、火力や太陽光による発電設備の建設を進めている。

 両社が共同で運営する川崎天然ガス発電所の電力は首都圏で事業を展開する新電力に向けて販売する方針だ。東京ガスとJX日鉱日石エネルギーは自社でも新電力として小売事業の届け出を済ませているほか、東京ガスは新電力で約5割のシェアを誇る最大手のエネットにも出資している。

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