転換期を迎えた火力発電、2030年に向けて総量規制を法制度・規制(2/2 ページ)

» 2015年06月15日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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高効率の石炭火力とLNG火力を優先

 BATには石油火力は含まれていない。将来の電源として石油火力を必要とする理由がないからだ。すでに世界の先進国では、石油火力をほとんど使っていない(図5)。日本だけが電力の1割以上を石油火力に依存している状況で、世界の流れに取り残されている。

図5 先進国におけるエネルギーミックスの現状(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁(IEAなどの資料をもとに作成)

 石炭火力やLNG火力よりも前に石油火力を廃止する必要があることは明らかだ。電源別の発電コストを比較すると、石油火力は圧倒的に高い。石炭火力やLNG火力の3倍にもなり、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーさえも上回っている(図6)。2030年のエネルギーミックスの目標には石油火力が3%だけ残っているが、離島の小規模な発電設備をLNG火力へ移行すれば全面的に廃止することも可能だろう。

図6 2014年の電源別の発電コスト(画像をクリックすると詳細情報を表示)。出典:資源エネルギー庁

 石炭火力とLNG火力の配分もCO2排出量の削減には重要だ。石炭火力はLNG火力と比べてCO2排出量が2倍になる(図7)。今後LNGの価格が下がっていけば、発電コストの面でも石炭火力の優位性は薄れていく。発電効率の高い最新型を増やして従来型を廃止するルールづくりが必要だ。

図7 電源別のCO2排出係数。出典:環境省(資源エネルギー庁などの資料をもとに作成)

 石炭火力とLNG火力は技術革新によって発電効率の改善が進んでいる。特に石炭火力では日本の技術が世界の最高レベルにある。今後の主流になる発電方式は、石炭をガスに転換してから燃焼させる「IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle、石炭ガス化複合発電)」である(図8)。

図8 火力発電の熱効率の向上。石炭火力(上)、LNG火力(下)。出典:資源エネルギー庁

 IGCCを採用した発電設備は従来型の石炭火力と比べて3割ほど効率が高くなり、それだけ燃料費とCO2排出量が少なくなる。LNG火力でも最新型はIGCCと同様のコンバインドサイクル(複合発電)が標準的になってきた。コンバインドサイクルはガスタービンで発電した後に、排熱を使って蒸気タービンでも発電することができるため、1つのタービンで発電する方式よりも効率が高くなる。

 火力発電の方向性は明確になっている。政府が主導して総量規制のガイドラインを設けたうえで、事業者ごとの割り当てを決めれば、老朽設備の廃止と高効率設備の新設が進んでいく。CO2排出量だけではなく化石燃料の輸入量も削減できて、日本の将来にとって望ましい状況になる。

続報:「進化を続ける火力発電、燃料電池を内蔵して発電効率60%超に」

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