2030年代に向けて火力発電の仕組みが大きく変わる。国を挙げて取り組む次世代の火力発電は燃料電池を内蔵する複合発電(コンバインドサイクル)がガス・石炭ともに主流になっていく。2030年代には発電効率が60%を超える見通しで、CO2排出量も現在と比べて2〜3割は少なくなる。
政府は2030年のエネルギーミックス(電源構成)の目標を決めたのに続き、次世代の火力発電の技術開発を推進するロードマップの策定に着手した。7月6日に開催する「次世代火力発電協議会」の第3回の会合で素案をとりまとめる方針だ。ロードマップの対象は石炭とLNG(液化天然ガス)を燃料に使う火力発電で、技術革新が見込めない石油火力は対象から外す(図1)。
石炭火力とLNG火力のロードマップには2030年までに実現可能な技術の中から、主流になると見込まれる5種類の発電方式を中心に開発目標を設定する。石炭火力は3種類、LNG火力は2種類で、いずれも2030年代には燃料電池を組み合わせた複合発電(コンバインドサイクル)へ進化していく(図2)。
石炭火力では現時点で最先端の「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」を高温・高圧にした「先進超々臨界圧(A-USC:Advanced-USC)」が今後の主流になる。その次に石炭をガス化してから燃料に使う「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」を2020年をめどに実用化する方向だ。
IGCCはLNG火力で使われる複合発電の仕組みを石炭火力にも応用した新しい技術である。ガスタービンで発電した後に、燃焼時の排熱を利用して蒸気タービンでも発電する2段階方式によって効率を高める。すでに東京電力が福島県内の2カ所にIGCCの発電設備を2020年の夏までに運転開始する計画を進めている。
さらに2020年代の半ばには、IGCCに燃料電池を組み合わせた「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」の実用化が見込まれる。IGFCになると発電効率(熱エネルギーを電力に変換できる割合)は55%程度に達して、現在の石炭火力で最高レベルのUSC(40%程度)を大きく上回る(図3)。
当初のIGFCでは燃焼温度が1500度級だが、2030年代には1700度級に引き上げる。この時点で発電効率は60%を超えて、現在のLNG火力で最高水準の「ガスタービン複合発電(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)」よりも高くなる。CO2の排出量もLNG火力と同等のレベルまで下がる。
IGFCを採用した発電設備では、中国電力とJ-POWER(電源開発)の共同プロジェクトによる「大崎クールジェン」が最初の実用例になる見通しだ。大崎クールジェンは広島県にある中国電力の「大崎発電所」の構内にIGCCとIGFCの実証機を建設する予定で、IGCCを2017年度、IGFCを2021年度に運転開始する計画になっている。
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