再エネと原子力ともに20%超で決着、“暫定的な”2030年のエネルギーミックス法制度・規制(1/2 ページ)

国の温暖化対策の目標値を決めるうえで欠かせないエネルギーミックスの原案がまとまった。2030年までにCO2排出量を削減するため、再生可能エネルギーと原子力の発電量をいずれも20%以上に高める。ただし暫定的な目標に過ぎず、再エネと原子力の比率は変動する可能性が大きい。

» 2015年04月30日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 3カ月間に及んだエネルギーミックス(電源構成)の議論が決着した。政府が有識者を集めて長期のエネルギー需給見通しを検討した結果、2030年の総発電量のうち火力の比率を6割以下へ引き下げる一方、原子力は22〜20%程度、再生可能エネルギーは22〜24%程度に拡大する方向で当面の施策を推進していく(図1)。

図1 2030年のエネルギーミックスの算定結果。出典:資源エネルギー庁

 担当省庁の資源エネルギー庁が産業界の意向を反映させた内容と言えるが、あくまでも暫定的な目標に過ぎない。原子力発電所の再稼働が想定通りに進展する保証はなく、代わりに再生可能エネルギーの導入量をさらに拡大できる余地がある。このため政府は2017年から3年ごとに策定する「エネルギー基本計画」の中で比率を見直す方針だ。

原子力20%には36〜37基の稼働が必要に

 政府がエネルギーミックスを示したことで、短期的な影響は2つ考えられる。1つ目の影響は電力会社が原子力発電所の再稼働を進めやすくなることだ。

 2030年に原子力の比率を20%まで高めるためには、年間の発電量を2168億kWh(キロワット時)以上に拡大する必要がある(図2)。現在までに廃炉が決まった設備を除いて全国に43基ある原子力のうち、36〜37基程度を運転させなければならない。このような状態が現実的かどうかはともかく、電力会社にとっては再稼働に向けて追い風になる。

図2 2030年のエネルギーミックスの内訳。出典:資源エネルギー庁

 もう1つの短期的な影響は、火力発電所の廃止や更新の時期が早まることだ。政府がエネルギーミックスの議論を急いだ最大の理由は、2030年までのCO2排出量の削減目標と対策を具体的に決めるためである。2015年末までに世界各国とのあいだで削減目標を合意する必要があり、遅くとも6月中に原案を策定しなくてはならない。

 石油・石炭・LNG(液化天然ガス)を合わせた火力発電の比率は2030年に56%まで引き下げる目標だ。2013年度の88%から大幅に減らすために、コストの高い石油だけではなくて石炭やLNGの発電設備も縮小する必要がある。老朽化した設備を早めに廃止して、高効率の発電設備に集約する動きが加速していく。

再エネの買取費用を4兆円以下に抑える

 これに対して再生可能エネルギーの導入量に与える影響は小さい。2030年の目標を低めの22〜24%にとどめた要因の1つは、固定価格買取制度の買取費用を年間4兆円以下に抑えることにある。2030年の国全体の電力コストを2013年の9.7兆円から引き下げるためだ(図3)。

図3 2013年と2030年の電力コスト。出典:資源エネルギー庁

 ただし買取費用の半分以上を太陽光が占める想定になっている(図4)。その前提として、太陽光の買取価格を2030年の時点でも1kWhあたり22円に設定した。すでに2015年の買取価格が27円まで下がっていることから、2030年には20円を切る可能性が大きい。それだけ買取費用が少なくなって、太陽光の導入量を増やす余地が生まれる。

図4 再生可能エネルギーによる発電電力量と固定価格買取制度(FIT)による買取費用の見通し。出典:資源エネルギー庁
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.