再エネと原子力ともに20%超で決着、“暫定的な”2030年のエネルギーミックス法制度・規制(2/2 ページ)

» 2015年04月30日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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原子力も再エネもゼロエミッション電源

 2030年のエネルギーミックスは短期的には原子力と火力に影響を与えるものの、長期的な観点ではCO2を排出しない「ゼロエミッション電源」を増やす効果を示しただけである。

 政府はエネルギーミックスを策定する基本方針として3つの目標を掲げた(図5)。自給率の向上、電力コストの抑制、温室効果ガス(CO2)排出量の削減である。こうした3つの目標を達成するための大前提になるのが、原子力の安全性を確保することだ。

図5 エネルギーミックスを策定する基本方針と目標。出典:資源エネルギー庁

 自給率とCO2排出量の目標は原子力と再生可能エネルギーのどちらを増やしても達成できる(図6)。今後の安全性と電力コストの進展状況によって、原子力と再生可能エネルギーの比率は大きく変わる可能性がある。2030年までに両方を合わせて44%以上に引き上げることが重要で、原子力14%+再エネ30%でも問題はない。むしろこの程度の比率のほうが現実的である。

図6 2013年と2030年のエネルギー需要と自給率。出典:資源エネルギー庁

CO2排出量を2013年比で25%削減へ

 政府は世界各国と合意するCO2排出量の削減目標として、2030年に2013年比で25%削減する案を提示する方向だ。すでに米国が2025年に18〜21%、EU(欧州連合)は2030年に24%とする案を提出済みで、それに匹敵する目標を出す必要がある。

 原子力と再生可能エネルギーを合わせた電源の比率を44%まで高めることによって、電力から生じるCO2排出量は2030年に34%削減できる見通しだ(図7)。震災前の2005年と比べても22%の削減率になる。

図7 エネルギーの生産・消費に伴うCO2排出量(左)、そのうち電力に関連する排出量(右)。出典:資源エネルギー庁

 このほかにも工場の設備の高効率化や電気自動車・燃料電池車の拡大など、さまざまな省エネ対策を実行して、エネルギーの生産・消費に伴うCO2排出量を2013年比で25%削減していく。エネルギーによるCO2排出量は国全体の9割近くを占めることから、政府が目標とする25%の削減量を達成することは十分に可能だ。

 省エネ対策の中でも、都市ガスなどを燃料に利用するコージェネレーション(電力と熱の両方を供給できるシステム)の効果が大きい。業務用と家庭用の燃料電池を中心に、2030年には電力に換算して1190億kWhの導入量を見込んでいる(図8)。ただしエネルギーミックスの発電量には含めずに、電力需要の削減分に盛り込んだ。

図8 コージェネレーションの導入量の予測。出典:資源エネルギー庁

再エネとコージェネで分散型の比率を高める

 エネルギーミックスを決めるにあたり、発電量の前提条件になるのが電力需要の予測である。2030年までの経済成長をふまえて電力需要を算出したうえで、省エネ対策の効果を差し引いた。省エネ対策によって2030年には1961億kWhの電力需要を削減できる見通しだ(図9)。このうち6割をコージェネレーションが占める。

図9 電力需要の予測。レファレンスは省エネ対策を実施しない場合。出典:資源エネルギー庁

 再生可能エネルギーとコージェネレーションは利用者の近くで電力を供給する分散型の電源になる。発電した電力のロスが少なくて済み、災害が発生した時にも停電のリスクが小さい。一方の原子力や火力、大規模な水力発電は集中型の電源のため、運転を停止した時の影響が大きい。この問題は東日本大震災で露呈した重大なリスクで、震災の教訓の1つとして早急に改善する必要がある。

 ところが今回のエネルギーミックスには、分散型の比率を高める目標は設定しなかった。原子力を復活させるうえで不利な要因になるからだろう。次回の見直しにあたっては、分散型の比率を指標の1つに設定して、災害に強いエネルギーミックスを決めるべきである。電力コストの抑制よりも重要な課題だ。

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