容量密度は黒鉛の4.4倍、水素化マグネシウムを使った全固体二次電池の負極材を開発蓄電・発電機器(1/2 ページ)

広島大学の研究グループは、全固体リチウムイオン二次電池の負極材料として水素化マグネシウム、固体電解質として水素化ホウ素リチウムを利用し、高い性能が得られることを発見した。

» 2015年06月16日 11時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 電気自動車や電力の安定化などの用途が拡大していることなどから、二次電池の高機能化や低価格化は大きな注目を集めている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2013年に発表した二次電池技術開発ロードマップ(図1)では、二次電池そのものの性能目標だけでなく、二次電池を構成するさまざまな部材に対して技術開発目標が掲げられている。

photo 図1:NEDOの二次電池技術開発ロードマップにおける「リチウム二次電池の正極と負極の組み合わせ」(クリックで拡大)※出典:NEDO

 電池は主に正極、負極、電解質から構成され、二次電池の性能進化には、これらの材料開発が重要になっている。リチウムイオン二次電池については、多くの新素材が活用されつつある正極材や電解質などに対し、負極材料はいまだに多くが黒鉛(グラファイト)を利用している。黒鉛の容量密度は1kg(キログラム)当たり約370Ah(アンペア時)とされており、二次電池の高容量化のためには、この容量を大きく向上させる必要がある。

注目を集める「水素化物」

 そこで注目されているのが「水素化物」だ。水素化物を負極に用いた電極についてはフランスの研究グループが2008年に国際学術誌「Nature Materials」に発表しており、水素化マグネシウムを利用した場合、黒鉛の約5倍の容量を達成可能だということが明らかになっている。一方、水素化ホウ素リチウムは、水素化マグネシウムと複合化することで、固体材料であるにもかかわらず高いエントロピー状態(無秩序な状態、電気の流れが発生しやすい状況)を取ることが発表されている。

 水素化マグネシウムと水素化ホウ素リチウムは高容量の水素貯蔵材料としても注目されている。ただ、水素化マグネシウムについては、リチウム二次電池負極材料として活用しようとした場合、充放電サイクルによる容量の低下と充放電時の電圧差が問題とされてきた。

 例えば、初期の充放電では1kg当たり1500Ah程度の容量を示していたが、20回程度の繰り返しで1kg当たり500Ah程度まで容量が低下することが確認されている。分極(充電時と放電時の電圧の差)についても、0.4V程度となることが報告されており、リチウムイオン二次電池として使用するのは十分ではないと判断されてきた。

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