太陽電池メーカーの米国ファーストソーラー社が独自開発の薄膜モジュールで変換効率を18.6%まで高めるのに成功した。現在の市場で主流の結晶シリコンタイプと同等の変換効率になる。カドミウムとテルルを原料にした化合物タイプの太陽電池で、製造コストの安さが特徴だ。
太陽光発電のコストを引き下げるためには、太陽電池の変換効率を改善する一方で、太陽電池の製造コストを低減する必要がある。この2つの課題に世界の主要メーカーが取り組む中で、米国のファーストソーラー社が独自開発の化合物タイプの太陽電池で新記録を達成した。
ファーストソーラーの太陽電池はカドミウム(Cd)とテルル(Te)を原料にした化合物による半導体で構成する。化合物タイプの太陽電池は光の吸収係数が大きくなる特性から、薄膜で軽量に作ることができる(図1)。CdTeを使った太陽電池モジュールではファーストソーラーが2014年3月に記録した17.0%が世界最高だったが、新たに18.6%まで向上させることに成功した。
太陽電池は光のエネルギーを電気エネルギーに変換する効率で性能が決まる。1970年代から始まった太陽電池の開発競争では化合物タイプのGaAs(ガリウムヒ素)の変換効率が最も高いレベルを維持してきたが、現在でも製造コストが高いために用途が限られている。
これに対してCdTeは加工が簡単で製造コストを低く抑えることができる。特に最近はファーストソーラーが変換効率を急速に高めたことにより、結晶シリコンタイプの太陽電池と比べても同等の性能を発揮するようになってきた(図2)。ただし毒性があるカドミウムを原料に使うために日本国内で製造しているメーカーはない。
日本の太陽電池メーカーもシャープやパナソニックを筆頭に変換効率の向上に力を入れて取り組んでいる。主流の結晶シリコンに加えて、化合物タイプではソーラーフロンティアが銅などを原料にしたCIS系の太陽電池でCdTeと同じ水準の変換効率を達成している。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に推進する国家プロジェクトでは、2050年に変換効率を40%まで高めることを目標に掲げた(図3)。日本を含めて世界各国の技術開発競争が続いて、太陽電池の変換効率はますます改善していく。
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