東北大学と筑波大学は、藻類が生成する炭化水素を輸送用のバイオ燃料に変換する新手法を開発した。震災の被害を受けた東北地方の復興プロジェクトとして行われている藻類を活用して都市下水を浄化し、同時にバイオ燃料の生成する次世代技術開発の一環として開発されたもので、バイオ燃料の実用化への貢献が期待される。
化石燃料に代わる次世代燃料として期待されているバイオ燃料だが、その生成技術の1つに藻を利用する方法がある。藻類の中には細胞内にオイルを高効率に生成する種類が存在し、そのオイルを取り出して輸送用燃料などに利用するという仕組みだ。
オイルを生成する藻類は複数あるが、大きく2つの種類に分けられる。1つが光合成によって増殖するタイプだ。このタイプは太陽光を利用する屋外設備で培養することが可能で、IHIなどの複数の企業がバイオ燃料としての実用化に向けた研究開発を進めている(関連記事)。
もう1つのタイプが有機物を得て増殖する従属栄養型の藻類だ。光合成を必要としないため、タンクの中や室内でも培養できるという特徴がある。その1つに「オーランチオキトリウム」(図1)という藻がある。2010年に筑波大学の渡邊信教授らの研究グループが、水中有機物を餌にスクアレンという石油の主成分である炭化水素を高効率に生産するオーランチオキトリウムの株を発見し、バイオ燃料の生成に利用できる藻として注目された。
この発見と2011年の東日本大震災を機に「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト」の一環として、2012年から東北大学、筑波大学、仙台市による共同プロジェクトがスタートした。その概要は、下水処理にオーランチオキトリウムなどの藻類を活用して下水を浄化し、同時に藻類の培養してバイオ燃料を生産しようというものだ。同震災で被害を受けた宮城県仙台市の「南蒲生浄化センター」内の試験設備で研究が進められている(図2)。
下水処理では下水中の固形有機物の除去、活性汚泥による溶存有機物の分解除去、有機窒素やリン酸などの分解回収といった処理が行われている。使用後の活性汚泥は沈殿濃縮され、産業廃棄物として焼却処理されている。そこで活性汚泥の代わりに水中の有機物を餌とするオータンチオキトリウムなどの藻類を利用すれば、焼却に掛かるエネルギー消費を抑えられる。同時に藻類が増殖することで、下水からバイオ燃料として新たにエネルギーを取り出せるという狙いだ。
しかし、ここで1つ課題がある。下水で培養されたオーランチオキトリウムが生成するスクアレンは、そのままでは輸送用燃料などに利用することはできないという点だ。
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