「水素社会」実現へ、パナソニックが普及を目指す3つの技術蓄電・発電機器(3/4 ページ)

» 2015年07月06日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

「エネファーム」の先にある「純水素燃料電池」

 パナソニックでは今後もエネファームの普及を進めるが、将来的に実現したい技術として開発に力を入れるのが「純水素燃料電池」である。将来的に水素社会が実現した際には、水素の供給が得られるようになる。その時に水素からそのまま発電できる「純水素型のエネファーム」を既に開発しており、山梨県と東京電力の共同事業である米倉山太陽光発電所のPR施設などで実証実験を進めているという(関連記事)。

 「総合的にCO2フリーの社会を実現するためには水素から発電する純水素燃料電池が必要になる。純水素燃料電池は、現行のエネファームに比べて、都市ガスから水素を取り出す機構などが必要なくなるので、部品点数も少なく、理論上は低価格化が可能だ。将来的には普及が進むと見ている。ただ、われわれの見通しでは、一般普及できる段階に入るのは2020年頃だと考えている。その時期までにコストダウンや性能の安定化などに取り組んでいく」と小原氏は述べている(図7)。

photo 図7:パナソニックの純水素型燃料電池のモックアップ(クリックで拡大)

水素を「つくる」では光水素製造デバイスを開発

 水素の製造については、光触媒を利用し水から水素と酸素を作り出す「光水素製造デバイス」の実用化を目指す。光水素製造デバイスは、太陽光が触媒に当たることで水を分解し水素と酸素を作り出すというものだ。シンプルな構造であるため、将来の低価格化が実現できる他、完全にカーボンフリーな水素製造が行える点が特徴だ(図8)。

photo 図8:光水素製造デバイスの仕組み(クリックで拡大)※出典:パナソニック

 パナソニックでは、水の分解を行う光触媒として、ニオブ(Nb)系窒化物を使った触媒を独自に開発。酸化チタンを用いた従来の光触媒が、太陽光全体の4%程度の紫外光を対象としたのに対し、ニオブ系窒化物による新規開発材料では、全太陽光の57%が使用可能で、高いエネルギー変換効率が得られるとしている。同研究開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のエネルギー・環境新技術先導プログラムに採択され、同機構の支援などを受けながら研究を進めていくという(図9)。

photo 図9:それぞれの光触媒の特徴(クリックで拡大)※出典:パナソニック

 小原氏は「水素の製造にはさまざまな方式が存在しているが、パナソニックではカーボンフリーな技術を追求していく。その意味でニオブ窒化物における光触媒は、カーボンフリーな水素製造においては将来的な本命技術となり得ると考えている」と強調する。ただ、実用化には課題も多い。「光触媒技術はどれも同じだと思うが、エネルギー変換効率はまだまだ小さく、これをどこまで高められるか、という点が当面の課題。実用化は、純水素型燃料電池のさらに先になるだろう」と小原氏は述べている(図10)。

photo 図10:光水素製造デバイスの設置イメージ(クリックで拡大)

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