太陽光だけで世界一周に挑む「ソーラーインパルス2」が最大の難関を乗り切った。日本時間の6月29日に名古屋空港を飛び立って4日と21時間52分でハワイのホノルル空港に着陸した。途中3日目には一時Uターンして発電量を増やす対策をとるなど、太平洋上で電力を確保する戦いを続けた。
現地時間で7月3日(金)の午前5時55分に、「ソーラーインパルス(Solar Impulse 2)」が米国ハワイ州のホノルル空港に無事に着陸した(図1)。天候の悪化によって名古屋空港で1カ月近く待機した後に、満を持して挑んだ最大の難関だった。
飛行距離は7212キロメートルで、飛行時間は117時間52分(4日と21時間52分)に及んだ。太陽光による電力だけをエネルギー源に使った飛行機として従来の記録を大幅に上回った。世界を一周する飛行計画の中で最長の区間を乗り切ったことにより、未来を切り開く壮大なプロジェクトの成功に大きく近づいた。ホノルルの次は米国南西部のアリゾナ州フェニックスまで飛ぶ。
約5日間の飛行中には、厳しい局面を迎えることも何度かあった。昼間に蓄電池に充電した電力を夜間に消費するため、蓄電池の充電量が20%台まで低下する日が続いた。3日目には昼間に発電量を増やすための対策として、一時的に逆戻りする形で方向を転換して機体の後方から太陽光を浴びる態勢をとることもあった。
最後にホノルル空港に着陸する直前には、上空から雲の合間を抜けるルートを見つけるために何度も旋回を繰り返した(図2)。ようやく現地時間の午前5時25分に太陽が昇り始めて、その30分後にホノルル空港の滑走路に着陸することができた。
名古屋を飛び立ってから5日目の最終日は天候に恵まれたが、蓄電池の性能が温度の上昇によって劣化する問題も発生していた。それでも現地時間の夕方には90%を超えるレベルまで電力を貯めることができて、夜間にホノルルまで到達するのに十分な電力を確保して飛び続けた(図3)。
ホノルルで5日間の飛行状況の検証と機体の点検・整備の後に、再び天候を見極めて次の目的地のフェニックスまで飛行する。ホノルルからフェニックスまでの飛行距離は4707キロメートルで、名古屋−ホノルル間の3分の2程度だ。順調に行けば3日あまりで到達する。
その後は米国の中部と東海岸を経由して、ヨーロッパに立ち寄ってから出発地のアブダビへ戻る予定だ。最後の2つの区間は飛行距離が5000キロメートルを超える。総距離が3万5000キロメートルに及ぶ世界一周のプロジェクトは、CO2を排出しないクリーンエネルギーのシンボルとして挑戦を続けていく。
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