全国の家庭で設置が始まったスマートメーターはネットワークに接続して情報をやりとりするため、パソコンと同様にサイバー攻撃の対象になる。最悪の場合には広範囲に停電を引き起こす可能性さえある。政府はセキュリティ対策の統一的なガイドラインを策定して電力会社に実施を求める。
スマートメーターはIT(情報技術)を詰め込んだ機器で、内部にはさまざまな通信機能や計測機能が組み込まれている。普段はわれわれの目に触れることもなく、電力会社のネットワークにつながって情報を送ったり受け取ったりする(図1)。情報の漏えいを防ぐためのセキュリティ対策をとっても、外部からサイバー攻撃を受けるリスクをゼロにすることはできない。
政府はスマートメーターのセキュリティ対策を強化する枠組みを検討して7月10日に報告書で公表した。セキュリティ対策の要件をまとめたガイドラインの素案を示したうえで、12月をめどに統一的なガイドラインを策定する方針だ(図2)。それをもとに電力会社をはじめ事業者が詳細な対策を実施して、小売全面自由化が始まる2016年4月までに有効性を検証するよう求める。
スマートメーターが外部からサイバー攻撃を受けて生じる問題には2種類ある。1つは電力の利用者(需要家)に関する情報が盗まれるケースで、その中には個人情報も含まれる。もう1つは電気設備に影響を与えて、停電などを引き起こす事態が想定できる。実際にスマートメーターがつながるネットワークには外部から侵入できる余地がある(図3)。
こうしたリスクに対しても、事業者は最低限のサービスレベルを維持できるように対策を実施しなくてはならない。情報面では料金請求や需給調整に必要な30分単位の電力使用量のほか、需要家が契約先を変更する場合に必要な過去の電力使用量やメーターの種別などのデータを提供できることだ(図4)。
電力の安定供給に関しては明確な基準がある。かりにサイバー攻撃を受けて電力の供給に支障をきたすことがあっても、影響を受ける対象が合計7000〜7万kW(キロワット)の場合で1時間以内に、7万kW以上に影響が生じる場合には10分以内に抑えることを要件にする。この基準は電気事業法で義務づけているサービスレベルである。
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