電力とガスにも「楽天スーパーポイント」、小売自由化で提携拡大電力供給サービス

インターネットを使ったサービスと組み合わせてエネルギー事業の拡大を図る楽天がLPガス事業者と提携する。開発中のHEMSを利用した新サービスを展開して、電力とガスを合わせて顧客を獲得する計画だ。全国に9977万人の会員を擁するポイントプログラムを生かして電力会社に対抗する。

» 2015年07月16日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 楽天は東日本を中心にLP(液化石油)ガスを販売するクレックスと業務提携の準備を開始した。クレックスは7社のグループでLPガス(通称:プロパンガス)を販売して、約25万の顧客を抱えている(図1)。楽天はクレックスの既存顧客に対して電力とガスを組み合わせた新しいサービスを提供してエネルギー事業を拡大する狙いだ。

図1 クレックスグループの営業ネットワーク。出典:クレックス

 両社はクレックスの既存顧客のうち関東圏の1万世帯を対象に、7月中にモニターを募集してニーズ調査を開始する。楽天は新電力で最大手のエネットなどと共同で「簡易HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)」を開発中で、家庭内の電力の使用状況に合わせた各種のサービスを展開する計画だ(図2)。クレックスの既存顧客にも簡易HEMSを利用したサービスを提供していく。

図2 「簡易HEMS」を利用したサービスの提供イメージ。出典:楽天

 楽天はインターネット上の通信販売や旅行予約、金融サービスなどを通じて、2015年3月末時点で9977万人の登録会員(ログイン会員7234万人)を抱えている。会員は楽天のほかに提携先の商品・サービスを購入すると「楽天スーパーポイント」を貯めることができる(図3)。楽天は電力やガスでもポイントプログラムを提供して顧客獲得に生かす。

図3 「楽天スーパーポイント」のロゴ。出典:楽天

 こうした複数の企業の商品・サービスに適用できる共通ポイントサービスでは、楽天スーパーポイントの会員数が国内で最も多い。2番手の「Ponta」(約7000万人)、3番手の「Tポイント」(同5000万人)を加えた3強が加盟企業を拡大しながら会員数を伸ばしている。

 すでに東京電力がPontaとTポイントの両方に加わることを決めて、電力の購入者にポイントサービスを提供する予定だ。楽天は現在のところ新電力と提携を進めていて、エネットのほかにも丸紅や伊藤忠エネクスと共同事業を開始している。

 丸紅とのあいだでは電力の小売に加えて、再生可能エネルギーによる電力の取引拡大にも取り組んでいく。2016年4月の小売全面自由化によって、小売事業者は調達する発電量と供給する電力量を計画段階で一致させる「計画値同時同量」を実施することが求められる(図4)。

図4 「計画値同時同量」による再生可能エネルギーの普及支援サービス。出典:楽天

 丸紅はグループ会社を含めて水力を中心に太陽光や風力の発電事業を全国各地で展開している。楽天は丸紅と共同で新電力を対象に計画値同時同量のサービスを提供して、再生可能エネルギーの普及を支援する方針だ。

 電力に続いて2017年4月には都市ガスでも小売全面自由化が始まる。すでにLPガスの小売は全面的に自由化されていて、家庭を含めて自由料金で販売することができる。楽天はクレックスとの協業を通じて販売ノウハウを獲得しながら、今後は都市ガス事業者とも提携する見通しだ。楽天が簡易HEMSを共同で開発しているエネットには東京ガスと大阪ガスが出資している。

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