静岡県富士市でLED照明を採用した世界最大級の完全閉鎖型植物工場が稼働している。農業ベンチャーのイノベタスが運営する工場で、東洋紡エンジニアリングが設計・施工を手掛けた。屋根には太陽光発電設備を設置しており、さらにデマンド制御による電力コストの削減も図っている。
東洋紡エンジニアリングは2015年7月22日、同社が設計・施工した栽培用光源にLED照明を採用した完全閉鎖型植物工場「富士ファーム」(図1)が順調に稼働していると発表した。昨今、次世代農業技術の1つとして注目されている植物工場関連事業に今後も注力していく方針だという。
富士ファームは静岡県富士市に本拠を置く農業ベンチャーのイノベタスが運営する植物工場で、2015年2月に完成し同年3月より稼働している。工場の延床面積は約1852平方メートルで、栽培用光源にLED照明を採用した完全閉鎖型植物工場としては「世界最大級の規模」(イノベタス)になるという。
富士ファームの設立には、植物工場関連の事業開発支援を手掛けるベンチャー企業のファームシップも参加。同社のクラウド型の遠隔制御システムによる栽培管理コストの低減や、デマンドコントロールによる電力コストの削減などが図られているという。屋根には太陽光発電設備を設置しており、再生可能エネルギーも導入している。
植物工場には植物の育成に太陽光を利用するタイプと、LED照明などを利用する完全閉鎖型がある。富士ファームのような完全閉鎖型の場合、虫や菌などの混入防止が可能で、棚を積み重ねるように空間を活用する多段層栽培が行えるため(図2)、少ない土地面積でより多くの収穫が見込めるというメリットがある。富士ファームの生産規模は日産1万2420株で、現在はレタスなどの葉物野菜を6品種栽培しているという。
植物工場ビジネスは安定的な生産量の確保に加え、生産した野菜をどこに販売するかという出口戦略も重要になる。イノベタスは生産した野菜を首都圏や地元静岡県内に出荷しており、さらにアジアを中心とした海外への販売にも取り組んでいるという。同社は5年以内をめどに富士ファームと同じ敷地内に新工場を建設する方針で、生産能力を日産3万株まで増強する計画だ。
こうした植物工場の設計・施工には、空調や電気、システム制御に関する技術が求められる。東洋紡エンジニアリングは、同社のグループ工場の設計・施工を手掛ける中でこうした技術ノウハウを蓄積しており、その新たな活用先として2011年より植物工場事業に参入している。同社は今後、国内外で植物工場関連事業の拡大に注力するとともに、機能性野菜などの栽培技術に関する研究も進めていく方針だ。
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