電力は水素と超電導の蓄電池に貯蔵、技術で走るクリーンエネルギー先進県エネルギー列島2015年版(15)山梨(1/3 ページ)

再生可能エネルギーに加えて水素の普及を目指す山梨県で先端的な実証プロジェクトが進んでいる。太陽光と小水力発電の余剰電力を水素に転換して貯蔵・再利用するほか、太陽光の出力変動を超電導の蓄電システムで安定化させる試みだ。森林資源を利用した木質バイオマス発電所の建設も始まる。

» 2015年07月28日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 全国には自治体が開発に失敗した造成地が数多くある。山梨県の甲府市にも「米倉山(こめくらやま)」の丘陵地帯で1990年にニュータウン開発計画が始まったものの、バブル崩壊で中止に追い込まれた。その米倉山の造成区域の中で、現在は国内で最先端のエネルギー実証設備が稼働中だ(図1)。

図1 「米倉山太陽光発電所」の実証試験設備(FW=フライホイール)。出典:山梨県企業局

 中核の設備は山梨県の企業局が東京電力と共同で2012年に運転を開始した「米倉山太陽光発電所」である。発電能力が10MW(メガワット)の大規模なメガソーラーの周辺には2つの付帯施設があって、再生可能エネルギーの未来を切り開くプロジェクトが進んでいる。

 1つは太陽光と小水力発電の電力を使って水素を製造する取り組みである。山梨県が「クリーンエネルギー先進県」の情報発信拠点として運営する「ゆめソーラー館やまなし」で2012年から始まっている。屋上に設置した太陽電池と雨水を利用した小水力発電に加えて、水素を製造・貯蔵・利用するシステムを導入してエネルギーの自給自足を可能にした(図2)。

図2 「ゆめソーラー館やまなし」のエネルギー自給自足システム(EV:電気自動車)。出典:山梨県企業局

 太陽光と小水力の電力から、「水電解式水素発生装置」で水素を作ることができる。水を電気分解して水素と酸素を発生させて、水素は気体のままタンクに貯蔵する。さらにタンクから燃料電池に水素を送り込み、施設内に電力を供給する仕組みだ(図3)。

図3 「ゆめソーラー館やまなし」のシステム構成(上)、水電解式水素発生装置「HHOG」(下)。出典:神鋼環境ソリューション

 再生可能エネルギーから作った電力で水素を製造できるため、CO2フリーの水素が循環する。太陽光や小水力で発電した電力が余っても、水素を作ってタンクに貯めておけば無駄にならない。再び電力が必要になったら、燃料電池で発電することができる。これから2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京都や神奈川県が推進していく水素エネルギーの活用法である。山梨県は3年も前に着手した。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.