首都大学東京、理化学研究所、北海道大学、埼玉県環境科学国際センター、海洋研究開発機構からなる研究チームは、日本近海の海面水温の変化が関東地方の夏の気温変動に影響を及ぼしていることを明らかにした。
2015年の夏は全国各地で記録的な猛暑となったが、電力需要を正確に把握するためにはこうした気温などの環境変化の精緻な予測技術も重要になる。首都大学東京、理化学研究所、北海道大学、埼玉県環境科学国際センター、海洋研究開発機構からなる研究チームは、日本近海の海面水温の変化が関東地方の夏の気温変動に影響を及ぼしていることを明らかにした。
夏季の地上気温の上昇は熱中症のリスクを高めたり、電路需要のひっ迫を引き起こしたりする可能性がある。これまで地域スケールの夏季の気候変動についてはあまり研究が進んでおらず、夏季の気温変動は平洋高気圧の張り出しの強さやエルニーニョ現象などが関係すると考えられてきた。
今回、研究チームは領域気候モデルという気象モデルを用いた数値シミュレーションを用い、過去31年間の関東地域の8月のデータを分析した(図1)。その結果、関東南沖を流れる黒潮周辺の年々の海面水温の変動が、関東地方の気温変動を増幅しており、約3割の気温変動は海面水温の影響によって説明できることが分かった。残りの7割は、太平洋高気圧の強弱、熱帯海洋の海面水温の遠隔影響や、陸地の乾燥具合などが影響していると考えられるという。
さらに今回の研究では、海面水温が平均よりも高い年は、地上気温だけでなく水蒸気量も多くなることがわかった。つまり、海面水温が平均より高い年は、高温多湿になりやすい傾向があるということだ。
高温で水蒸気が多い環境は、空調などのエネルギー需要といった人間の活動や、熱中症といった健康問題に直結しやすい。したがって研究チームは、信頼性の高い気候変動の把握と気象・気候予測を行うためには、既存の気象観測の継続に加え水蒸気量観測網の整備とデータアーカイブの自動化、さらに数値モデルの改良を通じて水蒸気量変動を理解することが重要であるとしている。
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