年率1.7%の経済成長が続いても電力需要は減る、2030年の見通しと対策エネルギー管理

5月までに決定する2030年のエネルギーミックスでは、省エネ対策による節電効果の見極めが重要だ。政府は年率1.7%の経済成長を前提に、企業や家庭で省エネ対策を実施した場合の電力消費量を算定した。2030年まで経済成長が続いても、電力消費量は2012年と比べて2.1%少なくなる。

» 2015年04月22日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 国全体のエネルギーミックス(電源構成)を決めるためには、今後の電力需要を見通したうえで、適正な供給体制を考える必要がある。資源エネルギー庁は2030年度の電力消費量を、省エネ対策を実施しない場合と実施した場合の2段階で算定した。

 対策を実施しない場合には2030年度に1兆1440億kWh(キロワット時)まで拡大するのに対して、対策を実施すれば9479億kWhに収まる見通しだ。比較対象の2012年度の電力消費量は9682億kWhで、省エネ対策によって2030年度には2.1%減らすことができる。

 しかも2030年度まで年率1.7%の経済成長が18年間にわたって続くことを前提にしている。実質GDP(国内総生産)は711兆円まで拡大して、2013年度の531兆円から1.4倍の規模になる理想的なケースだ(図1)。現実にはそれほどの経済成長は期待しにくく、電力消費量はさらに少なくなる可能性が大きい。

図1 省エネ対策を実施しない場合の電力消費量の見通し(左)、前提になる経済成長に伴う実質GDPの伸び(右)。出典:資源エネルギー庁

 資源エネルギー庁は電力の利用部門ごとに分けて、具体的な省エネ対策を挙げながら削減可能量を算定した。電力消費量が最も多いのは企業のオフィスなど「業務部門」である。次いで「家庭部門」、工場などの「産業部門」、自動車や鉄道を中心とする「運輸部門」の順になる(図2)。

図2 利用部門別の電力消費量の推移と実質GDP。出典:資源エネルギー庁

 業務部門では省エネ対策によって875億kWhの電力量を削減できる見込みだ。空調・給湯・断熱対策で190億kWh、LED照明の導入で229億kWh、複写機をはじめオフィス機器の性能向上で278億kWh、BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の活用などで178億kWhの削減が可能になる(図3)。

図3 業務部門の省エネ対策(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 同様の省エネ対策によって家庭部門でも558億kWh、産業部門では427億kWhを削減することができる(図4、図5)。一方で運輸部門だけは2030年に向けて電力消費量が増えていく。電気自動車や燃料電池車による電力消費量の増加が省エネ対策の効果を上回るためだ。

 2030年には鉄道を中心に省エネ対策で62億kWhを削減できる一方で、電気自動車や燃料電池車を拡大する施策によって100億kWhの電力需要が追加で生まれる(図6)。その代わりに石油をはじめ燃料の消費量を年間に1645万キロリットルも減らすことができる。地球温暖化防止の点でも省エネ対策の効果は大きい。

図4 家庭部門の省エネ対策(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
図5 産業部門の省エネ対策(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
図6 運輸部門の省エネ対策(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

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