小水力発電の取り組みに続いて、地熱や太陽光を活用するプロジェクトが県内の各地に広がり始めている。富山市の山岳地帯にある牛岳(うしだけ)温泉では、温泉の熱と太陽光をエネルギー源に使う植物工場が2014年4月から稼働を開始した。栽培するのは薬用植物のエゴマだ(図4)。
植物工場内の暖房に温泉の熱を利用する一方、エゴマの育成に必要なLED照明の電力を屋上に設置した太陽光発電システムから供給する。太陽光パネルには両面受光型を採用して、パネルの裏面でも発電することができる(図5)。片面だけの太陽光パネルと比べて1.1〜1.3倍の発電量を見込める。
牛岳温泉はスキー場としても有名で、冬には太陽光パネルの上に雪が積もる可能性がある。その場合でも太陽光が降り注げば、反射光を利用してパネルの裏面で発電することが可能だ。雪国ならではの対策である。
同じ富山市内では大規模なメガソーラーが2015年2月に運転を開始した。冬には雪が積もる20万平方メートルの広大な敷地に、3万枚の太陽光パネルが並んでいる(図6)。発電能力は7.7MW(メガワット)に達して、富山県で最大の太陽光発電所である。年間の発電量は700万kWhを見込んでいて、一般家庭で1900世帯分の電力を供給することができる。
積雪対策として、太陽光パネルを設置する架台の高さを2メートルに引き上げた。太陽光パネルの設置角度は30度に傾けて、パネルの上に雪が積もっても滑り落ちる設計になっている。同様の設置方法は豪雪地帯の新潟県でもメガソーラーに適用して効果を実証済みだ。
このメガソーラーを建設した土地の近くには、日本で初めて公害病の認定を受けた「イタイイタイ病」で知られる神通川(じんつうがわ)が流れている。川の上流にあった鉱山からカドミウムが排出されて、下流の田んぼなどを汚染したことが原因だった。土壌を改良するために土を採取した跡地がメガソーラーに生まれ変わった。
現在のところ富山県の再生可能エネルギーは古くから稼働している大規模な水力発電所が中心で、新たに固定価格買取制度の認定を受けた発電設備はまだ少ない。その中では小水力発電の次にバイオマス発電の導入量が増えてきた(図7)。
注目を集めるプロジェクトが「グリーンエネルギー北陸」の木質バイオマス発電だ。富山湾に面した射水市(いみずし)の工業地帯の一角で2015年4月に運転を開始した(図8)。燃料は富山県内で発生する間伐材を中心に、一部は県外からの未利用木材や海外からパームヤシ殻も調達する。
木質バイオマスを使った発電設備として富山県で初めて固定価格買取制度の認定を受けた。発電能力は5.75MWで、内部で利用する分を除いた4.95MWを売電する。売電先は新電力を優先して、地域の企業や学校・病院などに供給している。小水力に続いて太陽光やバイオマスでもエネルギーの地産地消が広がっていく。
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2016年版(18)富山:「急流に展開する小水力発電の効果、全国2位のエネルギー包蔵量を生かす」
2014年版(18)富山:「小水力発電所を45カ所へ、農村から温泉地まで用水路がめぐる」
2013年版(18)富山:「小水力発電で全国第2位、農業用水から下水までエネルギーに」
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