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» 2015年09月09日 11時00分 公開

自然エネルギー:最強植物のさらに10倍、狙った油を「藻」から得る (2/3)

[畑陽一郎,スマートジャパン]

リン欠乏条件でも増えるナンノクロロプシス

 今回の研究でクラミドモナスではなく、ナンノクロロプシスを選んだ理由は2つある。1つは高密度で培養でき、油脂の合成能力が高いからだ。

 「培養密度の制限は、クラミドモナスが107個/ml、ナンノクロロプシスが109個/ml。ナンノクロロプシスの細胞は少し小さいものの、(単位体積当たり)10倍以上の油を蓄積できる」(太田氏)。

 もう1つは、クラミドモナスはリン欠乏条件で油脂の他にでんぷんを蓄積する性質があることだ。ナンノクロロプシスであれば、油脂に限定できる。

 研究を始めるに当たって、ナンノクロロプシスが栄養欠乏条件に対して、どのように反応するかをまず調べた。

 通常の培養条件と窒素欠乏条件、リン欠乏条件においたナンノクロロプシスの状態を図2に示す。これは遺伝子を導入していないナンノクロロプシスの様子だ。まず十分に窒素やリンを与え、その後、培養液から窒素やリンを全てとり除いた(培養0日目)。

 ナンノクロロプシスの密度が高く、葉緑体がきちんと機能していると、培養液の緑色が濃くなる。窒素欠乏条件では色がほとんど変わらないことに対して、リン欠乏条件では、特に初期において色が濃くなっていることが分かった。

 このような反応はクラミドモナスと似ている。別途、遺伝子の働きを調べた結果、先ほど紹介したSQD2遺伝子が働いて、リンの欠乏に適応していることが分かった。

図2 リン欠乏条件(右端)でも細胞が増殖している。出典:東京工業大学

遺伝子導入でさらに油脂合成能力を高める

 前回の成果は、クラミドモナスのプロモーターと遺伝子をクラミドモナスで利用した。今回は、同じプロモーターと遺伝子をナンノクロロプシス*2)に導入した。

 導入後、クラミドモナスのプロモーターと同TAG合成遺伝子は十分に機能した。クラミドモナス(緑藻)とナンノクロロプシス(二次共生藻)は生物としてかなり異なる。それでもクラミドモナス由来の遺伝子などがナンノクロロプシスでもうまく働いたことに、意義があるという。

*2) 「(複数種類に分かれるナンノクロプシスのうち、実験に利用した種は)Nannochloropsis oculataに分類されているものの、われわれの分類では実際にはN.oceanicaに近いと考えている。遺伝子導入後は、Nannochloropsis NIES-2145と呼んでいる」(太田氏)。

図3 2014年の研究と今回の研究の関係 出典:東京工業大学(一部本誌が編集)

 以上の結果をまとめると、図3のように研究が進んだことになる。上段は遺伝子などを導入していないクラミドモナスを通常の培養条件においたときの状態を表す*3)。盛んに光合成が進むものの、油脂の合成量は少ない。条件が良いため、油脂の備えが必要ないためだ。

 中段は同じクラミドモナスを栄養欠乏条件においたもの。油脂の合成量は多くなるが、光合成は進みにくい。その後、2014年の研究によって、遺伝子などの導入を進めた。

 下段は遺伝子導入後のナンノクロロプシスでの結果だ。油脂の合成量は多く、光合成も十分機能している。2014年に得たクラミドモナスでの成果をナンノクロロプシスでさらに広げた。これが、今回の1つ目の成果だ。

*3) 図3にあるMGDGは葉緑体の主要な膜脂質。MGDGがうまく合成できないと、光合成が進まず、油脂ができにくい。

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