洋上風力発電が近海に広がる、着床式で全国15カ所へ自然エネルギー(3/4 ページ)

» 2015年09月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

水深30メートル以下の近海が対象

 日本の近海で年平均風速が7メートル/秒以上になる海域の総面積は12万平方キロメートルに及ぶ(図9)。発電能力が5MWの大型風車を1平方キロメートルあたり2基ずつ設置できると想定して、全体の発電規模は120万MWになる。設備利用率を標準の30%で計算すると、年間の発電量は3兆kWhに達する。

図9 洋上風力発電のポテンシャル(画像をクリックすると拡大して合計値を表示)。出典:NEDO

 電力会社10社が2014年度に発電した電力量(他社からの受電を含む)は約9000億kWhであることから、その3倍以上を洋上風力発電で供給できるポテンシャルがある。ただし着床式で建設できる水深50メートル以下に限定すると、発電量のポテンシャルは6分の1に減る。日本の近海は陸地から10キロメートル以上離れると、水深50メートル以上の海域が多くなり、その場合には発電設備を浮体式で建設する方法が一般的だ。

 着床式の洋上風力発電所は設置場所の水深によって、風車を搭載する基礎構造の種類が分かれる(図10)。最も多く使われている方式は円筒形の「モノパイル」と呼ぶ構造で、水深30メートル程度まで適用できる。国内で計画中の10カ所の洋上風力発電所のうち、基礎構造の種類が決まっている4カ所はすべてモノパイルを選択した。

図10 着床式の基礎構造の種類。左上から「モノパイル」「トリポッド」「ジャケット」「サクション」「重力」。出典:NEDO

 洋上風力発電が進んでいるヨーロッパでもモノパイルを採用する事例が多い。構造が単純なために建設費が安く済むためだ。通常は発電能力1kW(キロワット)あたりの建設費が日本円で50万円以下に収まる(図11)。日本の買取価格を決める前提になった建設費は56万5000円/kWで、モノパイルを使えば固定価格買取制度を適用して収益を上げやすくなる。

図11 ヨーロッパにおける洋上風力発電の初期費用。出典:NEDO

 ただし水深が30メートル以上になると、安定性の高い「ジャケット」を採用する必要が出てくる。ヨーロッパの実例ではジャケット構造にすると建設費が50万円/kWを超える。現状では日本国内でジャケットを採用した場合には採算がとりにくい。当面は水深30メートル以下の海域にモノパイルで設置するケースが主流になる。

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