太陽電池の劣化試験期間を3分の1に短縮、長期信頼性確保に貢献太陽光

第三者検査機関として工業製品の安全試験・認証を提供するテュフ ラインランド ジャパンは、日立製作所と共同研究した、太陽電池モジュールの高加速温度サイクル試験サービスを開始する。同試験により、太陽電池モジュールの長期信頼性試験にかかる時間を3分の1程度に短縮できるという。

» 2015年09月29日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 太陽光発電設備の耐用年数は17年とされているが、太陽電池モジュールそのものの期待寿命としては20〜30年といわれている。基本的には太陽電池モジュールは長期間使用し続けることができるが、発電能力は徐々に低下していくため、どの程度で買い替えが必要になるかは、メーカーや製品の状況に左右される。その長期使用における劣化試験を容易にするのが、今回のテュフ ラインランド ジャパンと日立製作所が共同開発した「高加速温度サイクル試験サービス」である。

 この高加速温度サイクル試験は、国際規格(IEC 61215など)の試験条件をより厳しくすることで劣化の進行を加速し、太陽電池モジュールの長期信頼性を従来の規格試験よりも半分から3分の1の試験期間で評価するもの。今回研究した加速条件をあてはめることにより、実環境使用7〜10年程度に相当するモジュールの長期信頼性を、約1カ月の試験期間(試験前後の出力評価なども含めると8週間)で評価できる(テュフ ラインランド ジャパン試算)。これにより、従来と比較すると、2〜3カ月要した試験期間を約1カ月に短縮することが可能だ。

 サービスでは、初期の定格出力検証も行い、初期性能および長期信頼性について3段階のランク付けを行う。判定基準は、過去に行ったさまざまなモジュールの信頼性評価結果をもとに策定している。これにより、評価対象モジュールの性能・信頼性の水準が明確になるため、モジュール調達者は製品選定時の比較検証や受入検査に、金融機関などは第三者検査機関による資産適正評価(デューディリジェンス)として活用することが可能だ。また、モジュールメーカーは、このランクをマーケティングツールとしてアピールすることができる。そのためこのサービスにより品質の高いモジュールが市場に流通することが期待されている。また、基本の試験サービスの他に、試験期間を延長し、実環境20年相当の評価をする試験も提供する。

 同サービス提供の背景には、2012年に固定価格買い取り制度が導入されて以降、国内の太陽光発電市場が1メガワットを超えるメガソーラーを中心に急速に普及が拡大している状況がある。メガソーラーでは、太陽電池モジュールの経年劣化による発電量低下は、事業収益に直接影響を及ぼすことから、太陽電池モジュールの長期信頼性は重要となる。そのため、建設前の選定や運転中のモジュールについて、短期間で評価可能な加速劣化試験方法が市場関係者から強く要望されてきた。

 今回の共同研究では、より短期間で評価することが可能な加速試験条件を検証。その結果、適切な範囲で温度ストレスをより大きくすることで、従来の温度サイクル試験と同等の劣化要因を維持しながら、劣化の進行が加速されることを発見した。得られた加速係数は、試験期間を従来の半分から3分の1に短縮させることが示唆されている。この条件で行う試験が「高加速温度サイクル試験」であり、成果は実環境と加速劣化試験における劣化要因の同等性を確認した点と、その劣化による出力変化量を厳密に評価し、ストレス水準との相関を得た点から、太陽電池モジュール劣化加速性を体系的に検証した初めての事例となるという。

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