木質バイオマス発電が日本海沿岸へ、離島に太陽光と風力と蓄電池エネルギー列島2015年版(32)島根(2/3 ページ)

» 2015年11月24日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

県内全域に木材の「集積ヤード」を展開

 島根県では長年にわたって人口の減少が続いた結果、1985年の79万5000人から2014年には69万7000人にまで落ち込んでしまった。ついに70万人を切ったことで危機感が高まり、県を挙げて産業の振興による雇用の創出に取り組んでいる。特に面積の8割近くを森林が占めることから、木質バイオマスの利用拡大が有効な対策の1つになる。

 大規模な発電所が2カ所で稼働したことにより、県内の森林で発生する間伐材などを効率的に集約する必要性が生まれた。そこで島根県の農林水産部は「集積ヤード」の設置を検討中だ。森林から遠くにあるチップ工場に木材を直接持ち込むのではなくて、各地域に集積ヤードを設置して森林からの運搬距離を短縮する。集積ヤードからチップ工場までは大型のトラックを使って大量の木材をまとめて運ぶことができる(図4)。

図4 「集積ヤード」の展開イメージ。出典:島根県農林水産部

 この方法で従来よりも多くの間伐材を収集できるようになれば、バイオマス発電所に供給する燃料を増やすことが可能になる。県内には2つの木質バイオマス発電所のほかに、中国電力が運営する火力発電所で地域の木質バイオマスを石炭と混焼している。森林の伐採やチップの加工・運搬作業が増えることで、新たに100人以上の雇用を創出できる期待がある(図5)。

図5 バイオマス発電による木材の流通拡大と雇用の創出効果。出典:島根県農林水産部

 島根県には中国電力の「島根原子力発電所」があるが、県民から再稼働反対の声が上がっている。今のところは原子力と再生可能エネルギーの両方を推進するのが県の方針だ。再生可能エネルギーに関しては新しい導入目標を2015年9月に設定した。4年後の2019年度までに太陽光・風力・小水力・バイオマスの4種類を拡大して、県内の消費電力量の30.4%を再生可能エネルギーで供給できるようにする。

 2014年度の比率は21.2%だったことから、4年間で1.5倍に引き上げる意欲的な目標である。年間の発電量では従来型を含めて水力が最も多く、次いで風力、太陽光、バイオマスの順になる。木質バイオマスは2014年度までは石炭と混焼発電する設備しかなかったが、新たに稼働した2カ所の発電所で最大の伸び率になる見通しだ。

 固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模を見ても、4種類の再生可能エネルギーがそろって増えてきた(図6)。バイオマスは江津と松江の2カ所の合計で全国21位になった。風力では浜田市の丘陵に建設中の「ウインドファーム浜田」が48MWの発電能力で2015年度内に運転を開始する予定になっている。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

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