製造時に原料が無駄になり、消費電力も大きい。現在主流の結晶シリコン太陽電池の「弱点」だ。長州産業は米Crystal Solarと共同でこの問題を解き、製品に直結する成果を得た。現在最高水準にある製品と同等の変換効率23%を実現し、コストを半減できるという。シリコンウエハーを「ガス」から直接作り上げることで実現した。
「HIT太陽電池と同程度の23%というセル変換効率を実現し、コストは従来の2分の1という高効率太陽電池を開発した。この太陽電池が普及すれば、多結晶シリコン太陽電池の存在を脅かすことになるだろう」(長州産業)。
多結晶シリコン太陽電池は、HIT太陽電池のように単結晶シリコンを用いる太陽電池と比較して、性能は幾分劣る。しかしながら、製造コストが低いために太陽電池市場の過半数を占めている(図1)。太陽電池産業に与える影響が大きそうだ。
同社は2015年12月4日、太陽電池セルを新手法で製造することで、製造コストを半減できると発表した。同時にセル変換効率は世界最高水準だという。米Crystal Solarが開発したDirect Gas to Wafer技術を適用してウエハーを製造、太陽電池セルにまとめ上げて実現した。用いたシリコンウエハーは、研究段階の数ミリメートル角というものではなく、一般的な太陽電池と同じ寸法156ミリメートル角だ。
製造コスト半減とはどのような意味だろうか。「Crystal Solarから当社へのウエハーの納入価格が、従来技術を用いたウエハーの2分の1という意味だ。技術だけを見ればさらにウエハーの価格が下がる余地があるだろう」(長州産業)。
今回のウエハーは量産一歩手前の段階にあるという。「製品化(量産)の条件は23%という変換効率をウエハーごとに安定して出せる状態になることだ。Crystal Solarが導入中の量産設備が稼働すれば、安定した発電性能を実現できると考えている*1)。ウエハーの成長速度は安定しており、同社の生産規模は年間100メガワット相当に達する予定だ。当社が販売する太陽電池をまかなうことができる規模だ」(長州産業)。
このウエハーを利用して、高い発電性能を持つ太陽電池セルを製造、太陽電池モジュールとして広く販売したいという。「Crystal Solarが製造したウエハーは、当社以外も購入できる。ウエハーと(後ほど紹介する)ヘテロ接合構造の組み合わせを利用して、高い効率と低コストを兼ね備えた成果を業界全体でシェアしたい」(同社)。
*1) 「現在は製造したウエハーを技術者がつまみ上げる動作などによって、パーティクル(不純物粒子)が混入し、欠陥密度が変わる。これが変換効率に影響を与える。量産ラインでは自動ハンドリング装置を導入して変換効率を確保する計画だ」(同社)。
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