ドイツのエネルギー政策は計画をうまく達成してきたといえるだろう。だが、弱点も残っている。褐炭だ。
図4に示したように、天然ガスを削減し、再生可能エネルギーを伸ばす政策には利点がある。二酸化炭素排出量を削減できるだけでなく、ほぼ全量を輸入に頼る天然ガスを抑えることで、貿易収支を改善し、エネルギーの輸入比率を低減できるからだ。
その一方で、20年以上、褐炭による発電量は1400〜1600億キロワット時の規模を維持してきた。なぜだろうか。褐炭はドイツ国内に大量に埋蔵されているからだ。褐炭は地表に近い位置にあり、採掘コストが低い(図6)。このため、褐炭を年間1.8億トン採掘している(2011年時点)。世界シェアは11.9%であり、世界第2の褐炭王国だといえる。従って、エネルギー産業としても規模が大きい。
しかし、褐炭は瀝青炭などと比較するとエネルギー資源として品質が低い。1キロワット時の電力を生み出す際、天然ガスと比較して約2倍の二酸化炭素を生み出してしまう。二酸化炭素排出の観点からは、第一に削減したいエネルギー源だ。
褐炭は国内で安価に入手できるものの、二酸化炭素排出量が多い。つまり、矛盾を抱えた資源だといえる。ドイツの二酸化炭素排出量は2009年に7億9849万トンという1980年以降の最低値を記録した。ところが、2013年には8億4599万トンまで増加。2014年に7億9858万トンまで下げたところだ(1人当たり9.8トン)*6)。もう一段、二酸化炭素排出量を下げようとするなら、褐炭に手を付けざるを得ない。
産業界の反対を押し切って褐炭を削減できるかどうかが、ドイツの次の課題になるだろう。
*6)日本の二酸化炭素排出量(2014年)は英BPによれば13億4311万トン。1人当たり10.6トン。
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