風力激増、30%を再生エネから得たドイツ自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2015年12月28日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

日本の現状は12.2%

 ドイツの電力源の構成がこれまでどのように変化してきたかを示す前に、日本の電力源の構成を挙げておこう(図3)*3)。2014年度、再生可能エネルギーが占める割合は12.2%だった。残りの87.8%は火力発電である。

*3)日本の人口は1億2688万人(2015年7月1日時点)、面積は37.8万平方キロメートル、1人当たりの年間発電量は7172キロワット時。図3の数値は10電力計、他社受電分を含む。数値は以下の通り。地熱・新エネルギー(295億キロワット時)、水力(818億キロワット時)、原子力発電(0億キロワット時)、火力(7987億キロワット時)。火力に占める天然ガスの割合は52.6%。石炭は35.3%、石油は12.1%。

図3 日本の電力源構成 出典:電気事業連合会が2015年5月22日に発表した2014年度の電源別発電電力量構成比を基に本誌が作図

ドイツの勢いが止まらない

 ドイツは計画的にエネルギー源の構成を変えている。まず、総電力需要を抑制する*4)。次に原子力発電の比率を引き下げて2022年までに全廃する。この穴を埋めるのが再生可能エネルギーだ。

 図4では7種類の再生可能エネルギーを1つ(緑色)にまとめ、他のエネルギー源と傾向を比較した*5)。2014年に褐炭を抜いて第1のエネルギー源になった後も、再生可能エネルギーの勢いが全く衰えていないことが分かる。

 このような成長は意図的なものだ。2025年の再生可能エネルギーの政策目標は、40〜45%という比率。目標達成のためには、残された10年間でさらに10ポイント以上、再生可能エネルギーの比率を高めなければならない。その後、2035年には55〜60%、2040年に65%、2050年に80%まで高める計画だ。

*4)例えば、2016年1月からは新たにボイラーの効率を高める政策や、超高圧直流給電を促す政策、熱電供給を目指した発電所の建設を促す政策などを実行に移す。
*5)図4と図5は2種類のデータに基づく。1990年〜2014年のデータはドイツ連邦経済エネルギー省が発表した「ドイツの電力生産量統計(Bruttostromerzeugung in Deutschland ab 1990 nach Energietragern)」。2015年のデータはドイツ連邦水道エネルギー連合会が今回発表した数値である。

図4 ドイツのエネルギー源の構成変化 出典:ドイツ連邦経済エネルギー省と、ドイツ連邦水道エネルギー連合会が公表したデータに基づき本誌が作成

風力の「異常な」成長

 図5には主要な5つの再生可能エネルギーによる発電量の変化を示した。図から明らかなように、風力の急激な成長が際立つ。

 2014年から2015年にかけての風力の成長率は図2の数値から分かるように4割近い。これは異常値なのだろうか。そうではない。ドイツ政府は2020年までに陸上風力発電設備を毎年2.5GWずつ導入する計画を進めている。2015年末時点の導入量は約25GW。毎年1割を増設する形だ。

 図2で4.5倍以上に成長していた洋上風力も計画的なものだ。政府は2020年までに6.5GW、2030年までに15GWの設備を導入する計画を発表している。

 なお、太陽光やバイオマスの導入量は計画を達成済みであり、今後の導入量の数値目標はない。政策の誘導があまりなくても、導入に経済的なメリットがあるために増えている形だ。

図5 主要な再生可能エネルギーの成長傾向 出典:ドイツ連邦経済エネルギー省と、ドイツ連邦水道エネルギー連合会が公表したデータに基づき本誌が作成

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