広告代理店の博報堂が電力の小売自由化をテーマに実施したアンケート調査によると、電気料金が安くなれば電力会社を変更する意向がある人は6割を超えた。新しいサービスで利用意向が最も高いのは長期契約による割引メニューで、ガスとのセット割引やポイントサービスの関心度も高い。
博報堂のエネルギーマーケティング推進室が全国1000人を対象にした電力小売自由化のアンケート調査を毎年実施している。2015年11月に実施した最新の調査では、自由化を機に電力会社を変更する意向のある人は回答者の7割を超えた。1年前の調査時と比べると64.0%から70.3%へ6.3ポイント増えている(図1)。自由化の認知度が高まるにつれて、変更したいと考える比率が上昇してきた。
電力会社を変更する意向がある人のうち、「電気代が今と一緒でも変えてみたい」と回答した人は3.8%にとどまるが、「電気代が今より安くなるのであれば変えてみたい」と回答した割合は66.5%にのぼった。一方で「電気代が安くなっても変えてみたいと思わない」という“現状維持派”は8.7%で、1年前(9.0%)とほぼ同じ割合を占めている。
変更意向のある703人の中では、「自由化後すぐに変える」ことを検討している割合は17.5%だった(図2)。前年の調査では17.2%で、比率はほとんど変わっていない。それに対して「最初に変えた人の様子を見てから変える」と回答した“横にらみ派”が47.1%にのぼる。1年前(49.2%)と比べてわずかに減ったものの、すぐに変更に踏み切らない層が全体の約半数を占める状況は続いている。
男性に比べて女性のほうが慎重のようだ。女性のうち4割以上は「多くの人が変えるようになってきてから変える」と回答した。「自由化後すぐに変える」は12.0%である。家庭内で電力会社を選ぶ権限は女性が握っているケースが多いと想定される。4月の自由化後すぐに電力会社を変更する割合は1割程度にとどまる可能性もある。
利用者の多くが電気料金の安さを重視していることから、ガス会社などが提供する長期契約やセット割引に対する関心は高い(図3)。このところ利用者が増えているポイントサービスの注目度も高く、各社のセット割引率や付与するポイント数によって事業者を選択する傾向が一般的になっていく。
その一方で「再生可能エネルギーのみを販売する料金メニュー」に対しては24.5%の人が関心があると回答した。「地域の発電所の電気のみを販売する料金メニュー」にも19.9%の回答者が興味を示している。エネルギーの地産地消を推進する地域特化型の小売電気事業者が全国各地で増えて、環境保護や地域振興に関心の高い利用者を獲得することが予想される。
博報堂が実施したアンケート調査は全国の20〜60代の男女1000人を対象に、インターネットで回答を求めたものである。電力の小売自由化をテーマに2010年から6年間にわたって調査を続けている。
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