阿蘇山の周辺で地熱発電の開発プロジェクトが活発になる一方で、沿岸部や平野部を中心に太陽光発電の導入量が急速に拡大中だ。大規模なメガソーラーが続々と運転を開始したのに続いて、県内の企業や住民が出資する「くまもと県民発電所」の構想も進んでいる(図4)。
すでに県民発電所の対象に決まった再生可能エネルギーは3種類ある。最初のプロジェクトは北西部の南関町(なんかんまち)で実施する太陽光発電で、5億5000万円の事業費をかけて2MWの発電設備を建設する(図5)。続いて小水力発電、さらに竹を燃料に利用するバイオマス発電も2016年度以降に着手する予定だ。
南関町の太陽光発電の導入場所は「エコアくまもと」と呼ぶ産業廃棄物の最終処分場である。広さが3万3000平方メートルもある巨大な施設(廃棄物の埋立地を覆う建築物)の屋根の上に、合計8000枚の太陽光パネルを設置した(図6)。2015年12月に運転を開始して、年間に212万kWhの電力を供給できる見込みだ。
県内に事業所を構える8社が設立した「熊本いいくに県民発電所」がメガソーラーを運営する。事業費の5億5000万円のうち5000万円を県民による個人ファンドで、4900万円を県内の企業を中心に法人ファンドで集めた。個人ファンドの出資者には分配金のほかに県の特産品を配布する方針だ。発電事業の収益の一部は2016年度から着手する小水力発電と竹バイオマス発電の資金に生かす。
熊本県内のメガソーラーにはユニークな取り組みも見られる。阿蘇山の北東に広がる産山村(うぶやまむら)で2015年3月に運転を開始した「産山山鹿(うぶやまやまが)ソーラーエナジーファーム」だ。3万7000平方メートルの遊休地に7000枚の太陽光パネルを設置して、1.8MWの電力を供給する(図7)。
このメガソーラーでは周辺に牧場が数多く点在する地域の特性を生かして、10頭の羊を放牧している。太陽光発電では地面から伸びてくる草の除去が欠かせないが、羊が草を食べることで除草の手間を軽減できるメリットがある。自然が豊かな高原で運営するメガソーラーとして、景観の面でも効果が期待できる。
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