プロパンガス会社が電力で攻める、低料金にセット割引も電気料金の新プラン検証シリーズ(23)(1/2 ページ)

全国でプロパンガスと石油製品を販売するシナネングループが関東を中心に家庭向けの電力販売に乗り出した。東京電力と中部電力の管内で4月1日から「ミライフでんき」を販売する。電力会社よりも安い料金にプロパンガスとのセット割引を加えて、同じ地域で競争する東京ガスにも対抗していく。

» 2016年02月24日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

連載:「電気料金の新プラン検証シリーズ

図1 家庭向けのエネルギー製品。出典:ミライフ

 国内のガス市場は都市ガスとLP(液化石油)ガスが二分している。都市ガスの契約者数が都市部を中心に約2900万件に対して、「プロパンガス」で知られるLPガスの契約者数も約2400万件にのぼる。近年は都市ガスに押されぎみのプロパンガス会社にとって、電力の小売全面自由化は既存顧客の維持と収益の拡大を図る絶好のチャンスになる。

 プロパンガス大手のシナネングループも小売事業会社のミライフを通じて、4月1日から「ミライフでんき」の販売を開始する(図1)。プロパンガスの「ひまわりガス」や石油製品の「ひまわり灯油」と組み合わせて、家庭向けにエネルギーのベストミックスを提案していく考えだ。

 「ミライフでんき」の供給エリアは東京電力の管内に加えて、中部電力の管内に入る長野県と静岡県を含む(図2)。このほかにシナネングループは北海道・東北エリアと西日本エリアにも小売事業会社を展開していて、同様に4月1日から電力の販売を開始する予定だ(2月23日の時点では料金プランを発表していない)。

図2 「ミライフでんき」の供給エリア。出典:ミライフ

 「ミライフでんき」には従来の電力会社の料金体系に合わせて2種類のプランがある。一般的な家庭を対象にした「ミライフでんきB」は、電力会社の標準プランである「従量電灯B」に対抗する。月額固定の基本料金と使用量に応じて課金する電力量料金の両方を割安に設定している。ただし契約電力が30A(アンペア)以上と30A未満で単価が大きく変わる(図3)。

図3 「ミライフでんきB」の単価。出典:ミライフ

 30A以上では電力量料金の3段料金のうち第1段階だけは東京電力の「従量電灯B」と比べてわずかに高いが、第2・第3段階は安く、ほとんどの家庭で割安になる(図4)。一方で30A未満の場合には電力量料金の単価がほぼ一律で、使用量が少ないと電力会社よりも割高になってしまう。

図4 東京電力の「従量電灯B・C」の料金体系。出典:東京電力

 契約電力が30Aで月間の使用量が300kWh(キロワット時)の標準的な家庭で試算すると、「ミライフでんきB」の月額料金は7717円である。東京電力の「従量電灯B」では7837円になり、120円の差がつく。さらにガス事業で競合する東京ガスの標準プラン「ずっとも電気1」の7848円よりも安い。ずっとも電気1は第1段階の単価を高く設定しているため、使用量が少ないと割高になる(図5)。

図5 東京ガスの「ずっとも電気1」の料金体系。出典:東京ガス
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