森林に囲まれた宮崎県だが、沿岸部を中心に日射量が多いことも特徴だ。宮崎市では年間の日照時間が2100時間を超えて、全国平均(1890時間)を10%以上も上回る。豊富な日射量を生かした新しい試みが宮崎大学のキャンパスで始まっている。
レンズを内蔵した集光型の太陽光発電システムを開発して、31%という高い発電効率を達成した(図5)。太陽の動きを追尾しながら、レンズで集めた強い太陽光で効率よく電力を生み出すことができる。一般的な太陽光パネルの発電効率は20%以下で、それと比べて1.5倍以上の効率になる。
さらに太陽光で発電した電力から水素を製造する実証試験にも取り組んでいる。市販の水電気分解装置を太陽光発電システムに最適な接続方法で組み込んだところ、太陽光から水素エネルギーへ24.4%の効率で変換することができた(図6)。実証試験を担当した宮崎大学と東京大学の共同研究チームによると、この変換効率は世界最高記録だ。
九州では太陽光発電が急増したために、春の電力需要が小さい時期に発電量が需要を上回ってしまう事態が懸念されている。余った電力を高効率で水素に変換できれば、気体か液体の状態で貯蔵して、燃料電池で利用することが可能になる。再生可能エネルギーが豊富な地域に水素産業を生み出せる期待も大きい。
新たな試みはメガソーラーにも見ることができる。戸田建設がNECグループの発電事業会社と共同で建設した「宮崎国富メガソーラー発電所」である。通常は太陽光発電に適していない山の北側の斜面を利用している。9万平方メートルを超える用地を4段階の高さに造成して、各段で十分な日射量を確保できるように設計した(図7)。
太陽光パネルの設置枚数は1万6800枚で、発電能力は4.3MWある。戸田建設が開発したパネル配置プログラムを使って、前後左右のパネル同士で日影ができないように最適な配置パターンを計算して設置した。
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