水素を吸収・貯蔵・放出できる合金、建物内の余剰電力を最大限に生かす蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2016年03月07日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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2020年のオリンピックまでに実用化

 水素吸蔵合金を使うと、気体の水素を常温・常圧の状態で1000倍以上の容量まで貯蔵することができる。水素の貯蔵方法には気体のまま圧縮する方法や、マイナス250度以下の低温で液化する方法もある。圧縮すると150倍程度、液化すると800倍程度の容量まで水素を貯蔵することが可能だ。こうした方式と比べて水素吸蔵合金は貯蔵容量が大きく、常温・常圧で扱えるメリットもある。

 さらに水素吸蔵合金は水素を吸収する時に熱を放出する一方、逆に水素を放出する時には熱を吸収する特性がある(図4)。この熱のエネルギーが大きいために、建物内の空調などに熱を利用することができる。放出した水素を使って燃料電池で電力と熱を供給する以外に、水素吸蔵合金の排熱と吸熱を生かしてエネルギーの利用効率を高めることが可能になる。

図4 水素吸蔵合金の吸蔵・放出時の特性。出典:産業技術総合研究所

 清水建設は独自に開発した「スマートBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)」を使って、水素貯蔵合金タンクと燃料電池を組み合わせた水素エネルギー利用システムを構築する。福島県の郡山市にある産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」の構内に実証システムを設置する予定だ(図5)。

図5 「福島再生可能エネルギー研究所」の施設。出典:産業技術総合研究所

 今年の秋までにシステムの設置を完了して、2018年3月まで実証運転を続ける。その結果をもとに実用レベルの水素エネルギー利用システムを開発して、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに実際の建物や市街地に導入することを目指す。国が推進する水素社会を新しいシステムで広げていく。

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