課題の水素ステーション、普及に貢献する関連技術が続々登場スマートエネルギーWeek 2016(1/2 ページ)

「水素社会」実現に向けた取り組みが進んでいるが、その大きな課題となっているのが水素ステーションなどインフラの普及である。2016年3月2〜4日に開催された水素・燃料電池関連技術の展示会「FC EXPO 2016」では水素インフラ普及に貢献するさまざまな技術が披露された。

» 2016年03月09日 13時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 究極のエコカーとして注目が集まる燃料電池自動車(FCV)の市販化を皮切りにインフラ整備・研究が進む水素・燃料電池市場。日本各地では水素ステーションの設置や開設計画が進んでおり、今後FCVの普及拡大が期待されている。エネルギーの総合展示会である「スマートエネルギーWeek 2016」(2016年3月2〜4日、東京ビッグサイト)内の「FC EXPO 2016」では、FCVをはじめ水素・燃料電池に関連した製品・技術、装置、システムが出展された。

FCV普及の大きな課題となる水素ステーション

 FCVは国内ではトヨタ自動車が2014年12月に「MIRAI」の受注を開始(図1)。ホンダも2016年3月に「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」のリース販売を始める予定だ。今後、FCVが順調に普及拡大していくにはFCVの低コスト化などとともに水素供給インフラ(水素ステーション)の整備が挙げられている。

photo 図1 「FC EXPO 2016」に出展されたトヨタ「MIRAI」のカットモデル

 経済産業省資源エネルギー庁によると現在81カ所(再生可能エネルギー由来の小型水素ステーションを含めると86カ所)の水素ステーションの開設が進められており、このうち47カ所が開所。2016年度以降も水素ステーションの開設は進められることが予想されている。今回の展示会ではこうした状況を背景に水素ステーションに導入する水素圧縮機、高圧水素ディスペンサー、ガス検知警報器などの出展が目立った。

通信機能付きなどの進化を見せる水素ディスペンサー

 水素などの産業ガス事業を展開する岩谷産業は商用水素ステーションの中核となる水素圧縮機「イオニック(IC-90)圧縮機」(ドイツ・リンデ社製)を出展した(図2)。イオン液体そのものをピストンの用に使用することで、シール性が高く、省スペース、大容量、高効率でコンパクトなどの特徴を持つ。既にドイツ・シュツットガルト空港など世界十数カ所で稼働中。日本初の商用水素ステーションとして岩谷産業が開設した尼崎ステーションをはじめ九州・小倉、東京・芝、埼玉・戸田、山口・周南でも導入している。この他、赤外線通信機能付き水素ディスペンサーなども紹介した。

photo 図2 岩谷産業の水素圧縮機「イオニック(IC-90)圧縮機」(ドイツ・リンデ社製)
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