省エネに効く地中熱、課題のコストを2018年度までに20%削減自然エネルギー

都市部でも郊外でも地域を選ばず利用できる「地中熱」は、うまく活用すれば空調エネルギーなどを大幅に削減できる。その一方で普及に向けた障壁となっているのが、利用するためのシステムの導入コストが高いことだ。NEDOでは都市部における地中熱の利用システム普及に向け、システムの低コスト化と普及促進を後押しする6つの研究開発テーマに着手する。

» 2016年03月10日 15時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は都市域での地中熱利用システム普及に貢献する技術の開発や、再生可能エネルギー熱利用システムの性能を適正評価するシミュレーション技術開発など、再生可能エネルギー熱利用の低コスト化と普及促進を実現するための技術開発6テーマに着手する。

 このプロジェクトは2018年度まで実施し、地中熱利用システムについて導入コスト・運用コストをそれぞれ20%低減、その他の再生可能エネルギー熱利用システムについて導入コストを10%程度低減することを目指す。

 再生可能エネルギーにより発生した熱を直接利用することは、電力への変換や送電などのロスを伴わないことから、電気利用と比較して効率が高く、エネルギー利用形態の多様化を図ることが可能だ。また、エネルギーセキュリティ確保に大きく寄与できることが期待されている(図1)。

図1 地中熱の利用イメージ 出典:環境省

 一方、得られる性能に比べて導入コストが既存技術より割高であること、要素技術の組合せで検討されているためシステム全体の最適効率の検討がなされていないことなど、多くの課題も抱えている。こうした中、NEDOでは、研究開発プロジェクト「再生可能エネルギー熱利用技術開発」(2014〜2018年度)で、再生可能エネルギー熱利用のコストダウンを促し、その普及拡大に貢献することを目的とした技術開発に取り組んでいる。

 これまで、プロジェクトでは、コストダウンを目的とした地中熱利用技術およびシステムの開発、各種再生可能エネルギー熱を利用するトータルシステムの高効率化・規格化、評価技術の高精度化などの開発を行ってきた。これらに加えて、今回、都市域での地中熱利用システム普及に貢献する技術開発や、再生可能エネルギー熱を利用するシステムの性能を適正に評価するシミュレーション技術開発など、新たに6テーマを採択した。採択テーマ、委託予定先は以下の通り。

  1. 都市インフラ活用型地中熱利用システムの開発(委託予定先:三菱マテリアルテクノ、秋田大学、日本ピーマック)
  2. 都市域におけるオープンループシステム(帯水層から揚水した地下水熱をヒートポンプで熱交換利用する方式のシステム)による地下水の大規模熱源利用のための技術開発(委託予定先:地域地盤環境研究所、環境総合テクノス、岡山大学)
  3. オープンループ型地中熱地中熱利用システムの高効率化とポテンシャル評価手法の開発研究(委託予定先:岐阜大学、東邦地水、テイコク)
  4. 地中熱利用システムを含む空調熱源トータルシステムシミュレーションの開発(委託予定先:日建設計総合研究所、名古屋市立大学)
  5. 太陽熱集熱システム最適化手法の研究開発(委託予定先:ソーラーシステム振興協会、名城大学、建築研究所)
  6. 太陽熱を利用した熱音響冷凍機(ループ管に封入した気体に音波で圧縮−加熱−膨張−冷却サイクルを発生させる熱音響現象を利用した冷凍機)による雪室冷却装置の開発(委託予定先:新潟県工業技術総合研究所、東海大学、新潟機器)

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