ホンダが取り組む「3つのゼロ」、カギを握る水素サイクルスマートエネルギーWeek 2016(1/2 ページ)

次世代のクリーンエネルギーとして注目を集める水素。水素社会の実現には製造から運搬、使用まで、それぞれで新たな技術革新が必要となる。これらに「つくる・つかう・つながる」コンセプトで取り組むのがホンダである。ホンダは2016年3月2日に開催された「FC EXPO 2016」の専門技術セミナーで「水素社会の実現に向けたホンダの取り組み」を紹介した。

» 2016年03月17日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 エネルギーの総合展示会である「スマートエネルギーWeek 2016」(2016年3月2〜4日、東京ビッグサイト)内の「FC EXPO 2016」では、FCVをはじめ水素・燃料電池に関連した製品・技術、装置、システムなどが紹介された。合わせて開催された専門技術セミナーでは、本田技研工業(ホンダ)執行役員の三部敏宏氏が登壇し「水素社会の実現に向けたホンダの取り組み」をテーマに講演した。

ホンダが目指す「Triple ZERO」

 自動車産業は過去から将来にかけていくつかの課題を抱えている。排出ガスによる大気汚染、CO2代表される温室効果ガスによる地球温暖化、そして将来枯渇が予想されるエネルギーの3つの問題だ。これらに対応できる技術として水素を用いる燃料電池自動車(FCV)は大きな可能性がある。

 ホンダでは環境負荷低減への取り組みの中で、環境側面の重要課題として特に気候変動、エネルギー、資源の有効活用の3つを最重要課題として捉えている。そして、これらの課題解決を図るために「『Triple ZERO』というテーマを掲げて『再生可能エネルギーによるCO2排出ゼロ化』『エネルギーリスクゼロ化』『資源と廃棄におけるリスクゼロ化』を推進している」と、三部氏は同社の取り組みを示した。

 製品における、環境負荷低減の具体的な目標としては、2020年までに製品CO2排出量原単位低減目標(グローバル)を定めて、エネルギー効率の高い製品の投入などにより二輪車と四輪車で2000年比30%低減(グラム/キロメートル当たり)、汎用製品で同30%低減(キログラム/時当たり)の達成を目指している。

 また、企業活動における環境負荷低減も進めており、製品ライフサイクル観点で全体の取り組みを強化する他、3R(Reduce、Reuse、Recycle)のさらなる強化、水資源使用量の最小化、生産工程でのVOC(揮発性有機化合物)排出の低減への取り組みなどを実行中だ。

 こうした活動の中で水素社会の実現についても積極的な姿勢をみせている。同社ではホンダが考える水素の「つくる・つかう・つながる」というコンセプトを打ち出した(図1)。

photo 図1 ホンダが打ち出す「つくる・つかう・つながる」コンセプト(クリックで拡大)出典:ホンダ

 このうち「つくる」技術では高圧水電解システムとして世界で初めて「パッケージ型」を実現したスマート水素ステーション「SHS」を開発した。「つながる」技術では外部給電用インバータ(可搬型AC変換器)「Power Exporter」がある。FCVと簡単に接続でき、最大9kVA(キロボルトアンペア)を出力する。インバータ発電機で培った信頼性と高品質なAC出力により災害時避難所や緊急時医療現場での使用なども考えられる。

photo 図2 外部給電用インバータ(可搬型AC変換器)「Power Exporter 9000」
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