次世代の電気自動車に搭載する高性能のリチウムイオン電池の研究開発が活発に進んでいる。トヨタ自動車と東京工業大学の研究グループは電解液を使わない全固体電池の性能を向上させることに成功した。リチウムイオンの伝導率を従来の2倍に高めて、充電・放電時間を3分の1以下に短縮できる。
トヨタ自動車と東京工業大学が共同で開発を進める全固体電池は従来のリチウムイオン電池のように電子を移動させる電解液を使わずに、すべての構成要素を固体で作る。次世代の電気自動車に向けてNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2012〜2016年度の5年計画で推進する先端技術開発プロジェクトの一環だ(図1)。
このプロジェクトでは2020年代に電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)に搭載するリチウムイオン電池のエネルギー密度を2.5〜4倍以上に高めることが目標になっている。電池を小型・軽量にして電気自動車の課題である航続距離を延ばす一方、安全性の向上とコストの低減も進めて日本の自動車・電池産業の国際競争力を高める狙いがある。
研究グループが新たに開発した全固体電池は世界最高レベルのイオン伝導率(イオンの動きやすさ)を発揮する(図2)。イオン伝導率が高いと多くの電流を流すことができるため、リチウムイオン電池の充電・放電時間を短縮することができる。
一般的に電池は2つの電極と電解質で構成する。開発した全固体電池は電解質にリチウム(Li)・シリコン(Si)・リン(P)・硫黄(S)・塩素(Cl)の化合物を採用した。同様にトヨタ自動車と東京工業大学が2011年に高エネルギー加速器研究機構と共同で開発した世界最高のイオン伝導率を持つリチウム・ゲルマニウム(Ge)・リン・硫黄の化合物と比べて、イオン伝導率が2倍の25mS/cm(ミリジーメンス/センチメートル)に向上する。
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