人口2000人の村に木質バイオマスでガス化発電、電力の自給率100%へ自然エネルギー(1/2 ページ)

日本有数の豪雪地で知られる長野県の栄村で木質バイオマス発電所の建設計画が始まった。村の森林組合が地域の間伐材から木質チップを製造して供給する。年間の発電量は村の全世帯の電力使用量に匹敵して、発電時の廃熱は融雪に利用できる。発電と林業で新たな雇用を生み出す効果も見込める。

» 2016年03月24日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 栄村の位置。出典:栄村役場

 栄村(さかえむら)は長野県で最も北部に位置する(図1)。人口2000人余りの村には冬になると平均して3メートルほどの雪が積もる。地域のエネルギー源を確保することは極めて重要だ。

 村の面積の86%を森林が占めることから、東日本大震災を機に木質バイオマスの利用計画が動き出した。2015年3月には森林組合の製材工場の中に木質チップの製造設備を導入して、村内の温泉施設や近隣の発電所に燃料の供給を開始した(図2)。さらにエネルギーの地産地消を推進するために、製材工場の隣接地で木質バイオマス発電を実施する。

図2 木質チップ製造の様子(栄村森林組合の製材工場内)。出典:栄村役場

 バイオマス発電装置メーカーのZEエナジーが発電所を建設して、グループ会社のZEデザインが発電所を運営する。両社と栄村が3月22日に発電事業に向けた協力体制を構築する覚書を結び、4月から発電所の工事に入ることが決まった。発電能力は500kW(キロワット)で、12月に運転を開始する予定だ。

 年間に330日の稼働で、発電量は396万kWh(キロワット時)を見込んでいる。発電所内で10〜20%の電力を消費した後に、残った320〜350万kWh程度の電力を外部に供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して約900世帯分に相当する。栄村の総世帯数(890世帯)を上回る規模になる。

 発電した電力は固定価格買取制度を通じて中部電力に売電する方針だが、将来はZEエナジーのグループ会社で電力小売事業を展開するZEパワーが地域の企業や自治体、家庭に供給する計画だ。発電所では村の住民を中心に10人程度の雇用を予定していて、地域の活性化にもつながる。

 さらに発電所の近くに村が避難所を建設することを検討中だ。栄村では東日本大震災の翌日に震度6強の地震が発生して、村内の住宅のうち約700棟が損壊する被害を受けた。災害時に必要なエネルギーを確保するうえで、バイオマス発電から避難所に電力を供給できるほか、廃熱を利用して入浴施設に温水を供給することも可能になる。

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